第12話 フィレオの喜び
「~♪~♪」
フィレオは歌と共にくるくると片足のつま先を軸にして回る。そのたびにひらひらと花びらが落ち、砂となって消えた。
「や、やめなよフィレオ、花びら無くなっちゃう」
フィレオはフィガロに背を向け、ぴたっと動きを止めた。
「花びら、無くなるの悲しい?」
「か、悲しいよ。替えの服があるならいいかもしれないけれど……」
「替えの服?」
フィレオはぴょんっと身体を半回転しながらこちらを向いた。
「この服しかないの」
「交換は?ロボットは?」
フィガロは自分とフィレオの扱いがもしかしたら違うのかもしれないと感じ始めていた。いや、そもそも夢の中に出てきて、ロボットにも干渉されないフィレオは何者なのだろうか。初めて自分以外の人間と出会えたフィガロにとって、そんなこと聞けるはずがない。フィレオに嫌われて会えなくなったら今度こそ発狂してしまうような、例えるなら感情の爆弾を受けとってしまったのだ。
「フィガロ、見たことない顔してる」
「えっ」
今の自分がどのような表情か、鏡が無いから分からないがきっと口がへの字になって、眉間にしわが寄って、目線は上に向いているだろう。
食事の時間が来ると、ロボットとフィレオが対面する。しかし、ロボットもフィレオも互いの存在を無視しているかのようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます