第11話 花びら

「フィレオ!花が!」

「花?落ちちゃったんだね。これフィガロにあげる」

 フィレオは花びらを拾い上げ、フィガロに渡した。

「ありがとう、フィレオ」

 フィガロは花びらを色んな角度から見た。生きた花の匂い。フィガロはその匂いをどこかで嗅いだような気がした。いや、常に漂っていたと言うべきか。

 フィレオはなぜ生花を服に巻いているのか?聞いたところで教えてくれなさそうだった。それに、フィレオにはその恰好が一番似合うとフィガロは思う。フィレオが答えてくれそうな質問を考えよう。

「フィレオは夢の海に住んでいるの?」

「海は夢じゃないよ」

 驚くフィガロにフィレオは続ける。

「海は、あるよ。だから、私は存在するの」

 フィレオはまた微笑み返したあと、フィガロが持っていた花びらに触れた。すると花びらは砂となってフィガロの手から零れ落ちた。フィガロは手を引っ込めて、唖然とするしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る