第7話 幻の白

 目が覚めた。新しい朝だ。フィガロは自分が穿ち続けた壁をぼんやりと眺める。白いふわふわしたものが邪魔をして見えない。目をこすって大きく見開いた。

 

「これ、私だ」


 少女は自らの形を象った壁を触る。まるでフィガロの作った偶像が本物になったかのように。

「そ、その声、君は僕の夢に出てきた子、だよね……?」

「うん」

 少女は、まだ幼さを残した可憐な少女だった。肩までの髪は黒く柔らかく、前髪は長めで頬に沿い、毛先が外にはねて首を傾けるたび軽やかに揺れる。とりあえずフィガロはお祈りした。

 

 フィガロは上下灰色のパジャマのような服装を強いられていた。それに比べると少女の格好は白い布を胸から下へ巻きつけるようにして纏い、腰の後ろには大きな花の飾りが咲いている。その花からはリボンが垂れ、スカート部分は膝上までの短さで、裾は花びらのように軽やかに広がる。

「あなたはこの施設を自由に出入りできるの?」「あなたは神様?」「ここは地獄でしょうか」

 フィガロの質問は止まらない。そんなフィガロに、再び少女は人差し指を口元に当てる。興奮していたフィガロは少し冷静さを取り戻した。

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