第5話 偶像崇拝
ベッド横の壁に小さく彫った自分の名前は消えていない。初めて見た光景にフィガロは今までにない高揚感に包まれていた。食事の時間だ。いつものロボット。就寝。海。起床……神様はあの日以来現れなくなった。
名づけられた少年は、次に神を求めた。あれの少女は女神だ、神様だ、光だ。そうに違いない。もう一度会うにはどうしたら良いかだけを考えた。枕の下に隠し、まだ没収されていないスプーンは角を帯び始めた。あの少女を忘れないように絵を壁に彫ることにする。点を穿つように少しずつあの日見た光を記憶をたどりながら、忘れる前になんとか形にしたかった。
頭の中には強く強く焼き付いているのに、実際にやってみると中々難しい。フィガロは石工ではない。うーん、と唸りながら遠くから確認しては近くで形を整えていく。まるで偶像崇拝だ。海に行っても少女に会えないなら意味が無い。フィガロにとって満足ならそれでいい、他に誰も見る人などいない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます