第2話 許された夢

 夢を見ることは許されていた。だが、必ず同じ海の夢を見る。黄金色の砂浜の感触、白くもくもくとした雲、寄せては返す、遠くを見るたびに青くなる海を眺める。今、自分は眠っているのだ。少年は砂浜と海しかない孤島を歩き、足跡を残す。色のない世界よりもこちらにいる方が心地よかった。孤島をぐるりと一周して、砂浜に寝転ぶ。そして目が覚めると灰色の天井が広がっていた。

 部屋には紙もペンもない。故に日記をつける事さえ許されない。壁に頭を打ち付けた傷から出た赤い血でハートを描いたが、翌日には傷もハートも消える。

壁を叩いてみたが、欠片すら手に入れられない。窓もまるで太陽の光だけが目の前にある感覚。

 最初、少年はできる限りこの部屋からの脱出を試みた。しかし、全てを諦めるのは早かった。

 短い電子音と共に扉がわずかに開く。ロボットが着替えを持ってきた。少年は古い服を脱ぎ捨て全裸になる。するとロボットが全身を蒸しタオルで清拭し、それが終わると新しい服と古い服を交換する。

 何の為に生かされているのだろう。必ず自分を生かして得をしている人間がいるはずなのに分からないまま時は過ぎた。

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