孤島のフィレオ

みきり

第1話 少年の世界

 部屋の色を意識したことはあるか。それは統一された色か。四面は灰色、窓はあるが見えるのは眩しすぎるほどの光。もちろん開かない。眠くなったらどうするか?遮光カーテンを閉める。空調は壁に取り付けられた小さな丸い機械の役目だ。耳を近づけるとゴウゴウという音がする。少年は機械と自分の心臓、どちらが先に壊れるだろうか、賭けをしていた。もちろん自分が先に死んだのなら結果を知る者はいない。

 

 短い電子音の後に扉が開く。上半身は人、下半身はタイヤの白い配膳用ロボットがこちらへ向かって来る。一度ロボットに体当たりをして閉じかけの扉へと逃走を図ったのだが、催眠ガスを噴射されてからは抵抗しても無駄だと分かった。

 食事の色は黄、紫、赤……少年は味わうことなくスプーンを使い胃へと流し込む。口を開けると歯磨きまでロボットがしてくれる。そして空になったトレイとスプーンをロボットへ返す。

 ロボットが部屋から出入りするとき扉がわずかに開く。何度もその外を見ようとしたが、絶妙に見えない。少年は自分の事をただの石ころとして生かされているのだと思った。いつか自分もコンクリートと混ざり合ってしまうのではないか。

 真っ白のベッドにもぐりこむ。汚してしまってもいつの間にか汚れは消えている。誰が洗っているのか。少年は何度も同じ問いを頭に巡らせ、やがて忘れていく。それの繰り返しだった。

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