第29話 死にゲー廃人、抜かされる
「とりあえず、そのまま黒霧の森に向かうか」
現在の時刻は午後八時。
まだまだ遊べる時間帯だ。
「本当に黒霧の森に向かうにゃ?」
「もちろん」
「それならせめてパーティーを組んでいかないにゃ?」
「そんな誰も勝てない七つの大罪に挑むパーティーなんてあるのか?」
「意外といるにゃ! もし倒すことが出来たならこのエクリプスで絶対の地位と名誉がえられるからにゃ!」
なるほど、と俺は頷きながらミーミの言葉を聞く。
確かに一年経っても誰も倒せていない敵を倒したとなると、話題になること間違いなしだ。
それこそ配信者であれば一気にトップ配信者になれるだろう。
俺は別にただ強い敵であれば誰でもいいため、そんなこと考えてもいなかった。
「まぁでもいいかな。ソロの方が気が楽だし」
これまでパーティーで戦ったことがないため、慣れるのにも時間がかかる。
それに俺は強い敵こそ、一人で戦ってみたい気持ちが強い。
まぁマルチの楽しみ方を知らないからこその考え方なのは自覚している。
レベルが上がって足を引っ張らないようになってくれば志穂などと一緒にマルチプレイもしたいと思っている。
◆
それから俺はヘキサーンの街を出て、フィールドを再び爆速ダッシュで駆け抜け、十分ほどで黒霧の森の入口に辿り着いた。
黒霧の森は一種のフィールドではなく、傲慢との戦闘用のボスフィールドのようで、その入り口には何人ものプレイヤーが集まっていた。
「おい、お前」
後ろから声をかけられ、俺は振り返る。
見るからに中堅っぽい装備の男プレイヤーが、にやりと笑った。
「お前も傲慢目当てか?」
「そんなところです」
「まぁこんな場所に来るならそれしかないよなぁ」
周囲のプレイヤーたちもこちらを見て、クスクスと笑っている。
「やめとけよ。傲慢はお前みたいな馬鹿を狙って楽しんでるんだ。あいつの背景やストーリーすら知らねぇ奴が挑むとこじゃねぇんだよ」
彼の言葉を聞いて、俺は肩をすくめる。
そんなことを言われても俺は別に強敵と戦ってみたいだけだ。
それを誰かに止められる筋合いはない。
既に黒霧の森には別のパーティーが入っていたようで入れないため、俺は入口で順番待ちをする。
そんな時だった。
「おい見ろ、あのパーティー……!」
周囲がざわめく。
視線の先には、一つのパーティーが現れていた。
二十人ぐらいだろうか。明らかに周りとはレベルの違う装備を着けている。
彼らが姿を見せた瞬間、周りの空気が変わった。
「マジかよ……オーロラ隊じゃねぇか!」
「誰だ?」
「お前知らないのかよ! 平均レベルが90を超えてる傲慢攻略で有名なあのパーティーだぞ!」
興奮する声があちこちから上がる。
順番を待っていた俺の前に、当然のように彼らが割り込んだ。
「……俺の順番なんだけど」
俺がそう言うと、オーロラ隊の隊長らしきプレイヤーが鼻で笑った。
「実力もねぇゴミがさえずるな。こっちは真剣なんだよ」
周囲のプレイヤーも同調するようにうなずく。
「ワンチャン狙いなら、彼らに譲ってやれ」
「そうだぞ、あいつらはこのボスを何度も研究してるんだ」
「どうせソロでおふざけ程度なら変わってあげろよ」
別に俺は口論する気もなかったため、軽くため息をついて一歩下がる。
「……そうですか。分かりました」
そのタイミングで、ちょうど前のパーティーが全滅したのか黒霧の森の入口が開かれる。
オーロラ隊の隊長は自信ありげに声を上げながら黒霧の森に入っていった。
「よしっ、今度こそ傲慢の野郎を倒してやるぜ!」
そして――
彼らが入ってから、わずか一分後。
黒霧の中から悲鳴と共に全滅エフェクトが上がった。
「「「…………」」」
静まり返る場。
一瞬で全滅したが、彼らは何を研究をしているのだろうか。
俺は腰に差していた黒の双剣を抜き、黒霧を見つめる。
背後からは馬鹿にする声などが聞こえているが気にする必要すらない。
「じゃあ、俺の番だな」
俺はそう呟き、一歩を踏み出した。
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