9.
他には所々に肉の破片のようなものまであった
その暫く進んだ先に発見をした
肉が、切られている
誰かの肉が、切られている……?
よく見るとそれは予想外に熊の肉だった
俺達と同じ生命のものだと思っていたのは勘違いだった
安堵をすると同時に込み上げてくるものがあった
そして俺たち三人は当然気を引き締めている
切っている者がこちらを発見した
ザン「気を付けて 来る」
俺は直ぐに多めの気から大型めの刃物を作った
レイは気を大量に集めて先が尖った長い棒を作った
ザンは元から装備をしていた長剣を抜き出した
あの者が来る――
それは片手に長くて太い刃物を持っている
狂ったように走って来る
来る
来た
それは真っ先に先頭のザンを狙った
それの刃が彼の目の前で思い切り振り翳された
同時にザンは瞬間に避けた と同時に彼は足に重力を加え思い切り蹴りを入れた
グアアァァッ!!と悲鳴を上げて倒れ込む
直ぐに立ち上がった
レイがそれの後ろに回り込んでいて 棒の尖った先を思い切りそれの尻に突いた
またもや悲鳴を上げた
直ぐに俺はそれの後ろに回り それの両足を掴んで思い切り回転し 力一杯勢い一杯に思い切り俺達が進行してきた方向へ投げ飛ばした
このまま死に絶えるか気絶するなどをして死ね
そう無慈悲に思ってしまっていた
悪いが殺す気しかないような者に何の気も移入出来ない
それは勢いよく地面に打ち当たった後 何も動かない
死んでいるのか否かは分からないが 俺達はこれで先に進める
それを置いて、先に進むことにした
起き上がったら直ぐに見つかるので、全速でそれが切っていた物を超える
やはり一本通路だ
その時声が聞こえてきた
遠く先からだ
(この者は反抗をした。なのでこのような処置をしたのだよ)
低くて齢を重ねたような声帯だ
何だこの感じは
レイが反応をしている ザンも表情に闇が落ちていた
実は俺も同じく感じるところがある
この予感が外れていて欲しいと
心のどこかで思った
俺達は意を決して進む
声は数人での会話だ
一人は…… 女性……?
しかも聞き覚えのある声だ
これは……
(何で、私の大切な夫が殺されなければならなかったの!)
「どうだ 間違いはないか」
ザン「ああ。間違いはないね。これはマカラのものだ」
俺達はゆっくりと進む
急に駆け付けては何かしらの危険があるかもしれないからだ
マカラ(それにしたって、レオンが魔物だったなんて今だに信じられないわ)
(今まで連れ添って来たのよ)
(何でそれが魔物なのよ レオンは確かにレオンそのもので、魔物などではなかったわ)
(その秘密を教えてやろうか?)
(ええ。何なのかしら)
(実はな レオンは元々、ある人間の
!
なんだと
レオンが
偽物……?
皆も驚いているようだ
(は…… ぁ…… ? パ パ…ク…… ?)
(コピーだ)
(そ それ な な あ に)
(ある者の遺伝子を使って完全に造り上げたコピーなんだよ)
(そ それだからと言って 彼が私と営んできた思い出は本物よ)
(確かにな が、彼の原型の男とは無関係だ……とは言っても、君には関係無いことなのかもしれないが この男 コピー体は死亡したので二度と目を覚さないよ さあ そろそろいいだろう
(……ええ)
マカラの足音がこちらに向かって来ているのが分かる
こうなったら堂々と顔出しだ
皆も賛同をした
俺達も前方へ歩み、マカラと対峙する
マカラ「! フリー君。二人も。」
ザン「あ!いつの間にかフリーが先頭になっていたなあ。先に呼ばれるのはそりゃあこの子だよなあ」
マカラ「何を言っているの!それより、貴方達が何故ここに」
ザン「俺が通っていた経理店というのはこの肉屋のことだったんだよね 正直言うと、聞こえてた 災難だったな……」
マカラ「え、ええ。」
マカラは顔を下げた
レオンが亡くなったことの方が彼女にとって苦痛だろうと思う
フリー「気になった レオンは本当に魔物だったと思うか?俺にはそうは思えない」
マカラ「私だってそう思う 彼が魔物な訳ないって」
フリー「やはり貴方は純粋な女性だな あんな輩の言うことに何度も耳を向けなくていい 彼は確かに造られた存在だったのかもしれない が 貴方が感じた彼の愛は本物だった 分かるか」
マカラ「……………… ええ」
マカラは粒の涙を何粒も流した
やはり、この者は分かってはいないのだ
レオンはレオンだったのだ
フリー「あのな マカラ 彼は今も生きているんだよ」
!?
皆が驚く
マカラ「ええ 分かっている。私の中で、生き続けているのよね。だから、こうやって涙を流していなくてよいのよね」
フリー「違う そもそもレオンは化け物にしては心があった まだ生きているんだ」
マカラは固まった
顔を下に落としたまま動かない
何かを考え込んでいるようだ
マカラ「生きて……いる………?レオンが………?」
ザン「おい。フリー。何を言っているんだ」
フリー「ザンも考えてみるといい 冷静にな レイも既に考えている」
マカラはレオンの全てを見ている筈
マカラは「もしかして」と無意識で言いながら直ぐに会話をしていた部屋へ引き返した
マカラは理解をしたみたいだ
俺達も彼女の跡を綴って進む
部屋は意外に綺麗な仕立てだった
これまでの雰囲気からはまるで異なる
マカラは部屋の隅で何かを探っていた
「見つけた」と言い何かの書類を見ている
恐らくそれが、彼が生きていることの証明である
マカラ「レオン。今、どこにいるの?」
そこにフリーがやって行き、答える
フリー「多分ここには居ないよ」
マカラ「多分、よね…… うん あっちの部屋にもいないわよね」
あっちというのは恐らくあれが造られている部屋だろう。扉がある。そこがザンが見たという生成の部屋だ。今は入りたくはない
マカラと会話をしていたあのレオンはパクリだと笑った輩がいそうだ
フリー「ここの部屋で重要そうなことは全て調べよう そして戻ろう」
皆で賛同をした
「その必要はない」
それは部屋の入り口付近から聞こえた
見ると俺達が倒したと思っていたあの熊肉を切っていた者だ
よろけているが、手に刃物を持っている
「突いてやる」
レイがそう言い 突っかかって行く
拳に力を込めて 思いっ切り拳を突く
するとそれは遠くへ飛んでいった 身体が思い切り何かにぶつかる音がする
レイ「今度こそこれで終わりだ」
そう言いレイはあの者の元へ駆けていく
「あーー!何か持ってるぞ」と言い、俺達の元へ戻ってくる
何かのチップだ
マカラ「ああ!それはこの地下の全ての情報が詰まっているのよ。それがあれば探索の必要はないけど、元々地下にはあの部屋以外には何もないよ」
マカラは生成部屋を指差す
そこの情報があればいい
直ぐに部屋を出ることにした
あの者は亡くなったように俺の目には見えた
すまないが擁護をする気にはなれない
そしてあの部屋の前で色々と喋ってしまったがその会話は聞こえてしまったのだろうか
マカラはそれは無いという
なるほど
マカラの職場はこういうことをしていたのか
非人間の生成
レオンも同罪だ
『この状況-- 俺はやらなくてはならない』 🌸🌼🌺 @aaaaak
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