天が落ちてきたら。(1分で読める創作小説2025/カクヨムコン11)♯4
柊野有@ひいらぎ
妄想母娘劇場
ええ。お笑いを一席。
秋風すぅと吹き、赤とんぼが浮かぶ夕暮れ。
ピンポーン。
無記名の小包が届きましてな。
相手がわからんと、受け取られへん。
翌日、またピンポーン。
三日目も、ピンポーン。
のぞき窓見てもドア開けても、誰もおらんのよ。
怖いから、お茶
ふと開いた、娘のX。
ぷりんと裸の女の子のお尻に、驚いて朝から娘へ連絡、家を飛び出した。
道すがら、黒猫親子三匹がゾロゾロ。 電信柱には菊の花束、その上を黒いモヤがうねうね。極めつけにカラスと霊柩車。
「えらいこっちゃ」
震えながら走ると、大柄な男にドーン!
目深なキャップで、英語で通話中。
アタシ小柄やし、ビヨヨーンと飛ばされましてん。
角曲がるたんびに別の言葉の奴にぶつかる、 洗濯機みたいにグルグルや。
「お母ちゃん、どないしたん? サンダル左右バラバラ、すっぴんて」
「もー、ちょっと聞いて。変な小包が届いてな、朝には消えとるんや」
「誰か持ってったんやろ。最近発送先ない荷物もあるし」
「それだけやない。あんたとこのツイッター」
「エックスな」
「そうそれ。えっちなリンクに、びっくりしてもうて」
「今どきそんなの山ほどあるって。AIで合成できるしな」
「ほんまに? エライ世の中になったもんや」
汗だくで来た母に、娘はケラケラと笑う。
──杞憂とは、このこと。
途中
安心して帰る途中、キャップの男に勢いよくぶつかって、
マンホールの
天は落ちてこんでも、異国語は落ちてきた。
笑う娘に、落ちる母。 取り越し苦労の果ては……。
帰宅して、テレビの前でお茶をすすると、真っ黒な目のおばあちゃん。
横で一緒に
「あ。こないだ事故に
「何言うてはるん、あんたもう三途の川、渡ってまっせ」
「は?
……気づいたら、不思議なことに娘の家の前。
「ちゅうわけでな、マンホールから這い上がってきてん」
「お母ちゃん、血だらけや!」
「結構毛だらけ猫灰だらけってなあ、命あっての物種やわ」
「深淵をのぞく時、深淵もこっち見てる言うやん、もう泊まっていき」
「おおきに」
「カットばん五枚じゃ足りひん」
「あるだけマシやわ、ありがと」
障子の影には、あの黒い目のおばあちゃん。
この世とあの世の間、母娘は湯呑みを手に笑っていた。
さて、マンホールは底なし。 これにてどろん。
夢か
了
天が落ちてきたら。(1分で読める創作小説2025/カクヨムコン11)♯4 柊野有@ひいらぎ @noah_hiiragi
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