第34話 私も演劇始めようかな?

 目の前に、両親の寝室がある。

 俺はドアの前に立ち尽くした。

 開けて良いのか? 

 変なバイアスがかかって、俺は震えが止まらない。

 

「どうしたの? お兄ちゃん」


「びっくりした! なんだよ急に、音もなく近寄るなって!」


 まったく、このタイミングで出て来られたら流石に驚くだろ。

 こいつ、顔が母さんそっくりだから、余計に心臓に悪い。


「だーって、お兄ちゃんが寝室の前で仁王立ちしているんだもん、なんか危ない感じ!」


「冷やかすなよ。お兄ちゃん、ちょっと大事な用があるんだよ」


「あー、なんか誤魔化したでしょ! もう、エロいなあ、高校生は!」


「なにマセた事言ってんだよ、いいのか? こんな所で油売ってて、もうすぐ受験だろ」


「大丈夫だよ、私、成績いいんだから」


「もう高校決めたのか?」


「うん、お兄ちゃんと一緒の所」


「なんで? お前ならもっといい高校狙えるだろ」


「いいの、だって家から近いし」


「そんな理由?」


「それだけじゃないよ。だってお兄ちゃん、部活楽しそうなんだもん」


「部活って・・演劇部が?」


「うん、私だって今日観てたんだよ、お母さん凄かったよね、なにあれ、アンコールって超ウケるんですけど(笑)」


「ああ、演劇のアンコールってどうしたらいいんだろうな?」


「お兄ちゃんがもう一度、首取れちゃえば良かったんじゃない?」


 簡単に言うなよな。

 ってか、よくもあんな内容の演劇なんて見て楽しめたな、中学生のクセに!


「やめろよ・・軽くトラウマだよ」


「ハハハ! でもいいなー、私も演劇始めようかな?」


「いいんじゃないか? 結構施設も充実しているぞ、1年の荒木美弥子ってのがいるから、話しといてやるよ」


 そうか、こいつが来年入学したら、俺たちが3年で2年に美弥子で演劇出来るんだよな・・・・母さんは3年に進級するのか、そもそも?

 まあ、案外悪くないかもな・・・・星野家が3人も居る部活ってのも、ちょっと異様だが。


「うん! よろしく言っといて!」


「・・・・なあ、妹よ」


「なーに、お兄ちゃん」


「ちょっと中に入らないか?」


「・・・・どうしたの?」


「入れば解るよ」


「あんまり良くないと思うよ、お父さんとお母さんの寝室に入るって」


「いいから!」


「ちょっと、お兄ちゃん!」


 俺は強引に中へ連れ込んだ。

 少し痛いと言う表情が、可哀想に思えたが仕方がない。

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