第14話 冬のミミック

雪やコンコン アラレやコンコン

降っても降っても まだ降りやまぬ

犬は喜び 庭駆け回り

猫はこたつで丸くなる――


※文部省唱歌『雪』(1911年発表)より引用


――そんな歌もあるけれど、うちの猫はこたつが嫌いである。

(少なくとも“今のところは”だが……)


そういえば昔、無理やりユー様をこたつに入れたら

マジでひっかかれたという苦い記憶がある。


だが、冬という季節は、油断すると何かを変える。

この時の私はまだ知らなかった――

我が家の“こたつ”が、後に猫界最強のミミックと化すことを。



そんなこんなで冬である。

我が世田谷家でも冬の風物詩"こたつ"の出動時期だ。


作業をしているとユー様とキーが相変わらずのお家芸"邪魔"をしてきたが、今更やつらの邪魔程度で作業が滞る訳もなく、無事終了した。


私はこたつに入って急須で入れたお茶を飲むのが大好きだ。

おちゃとおせんべいを用意して、こたつに入りTVを見始める。


ふとした時に甘えん坊のルイ君が私の所にやってきた。

懲りない私はルイ君をこたつに引きづりこんでみる――


しかし、ルイ君は急いでこたつから出てきて私に猫パンチ2発を放ち逃走…。


(ルイ君って絶対に仕返ししてからねげるよね…。)


* * *


翌日、起きたらあまりの寒さにこたつに駆け込もうとする私。

しかし、こたつに入ろうと近づいた瞬間だった!!


シュパ!!


突然こたつの中から猫の手が出てきて私の足を引っ掻いた!!


(えええええw)


こたつの布団をどかして犯人を捕まえようと手を伸ばすが――


シュパ!!


臨戦態勢になっている猫の攻撃は人を近づけない!!


あの白い手… 犯人はユー様か ルイ君か キーかノンか…

(全員手が白いじゃん!)


しかし、ユー様はこたつは嫌いだ。

ノンちゃんは攻撃的になっても真っ向勝負で倒せる。

ルイ君は昨日こたつから逃げていた…。


つまり犯人はキーだ!!


「キー! お前はもう包囲されている! 抵抗を止めて大人しくこたつを明け渡しなさい!!」

私は遠巻きにキーに警告する。


「にゃん?」


私に呼ばれたキーが私の後ろから出て来た。


(なんだと!? キーでは…ない?)


ではあの中にいる敵はいったい…。


私は猫じゃらしを持ち出し、こたつを陣取る魔物と戦闘をはじめる。


今回の猫じゃらしは先端にもふもふが付いており、猫の爪がひっかかる仕様の武器だ。


私はこたつの前で猫じゃらしを使い、爪が引っかかったらそのままひっぱり出す"猫釣り"を実行した!!


こたつの前でぱたぱたと猫じゃらしを動かす私…。


それにまず最初に釣られたのは… キーだった><


(いや… さっき私が呼んだんだけども!!)


「キーちゃん! こたつの魔物を倒したら遊んであげるから今は待ってて!!」

私はキーをどかしてこたつで魔物退治を再開する。


そして、爪がひっかかり、魔物を引き上げるが――


お… 重い!!


重くて力のある白い手…

まずい…


猫の強さに私の猫じゃらしが奪われてしまった――


おのれ… このパワーは… ルイ君だな…

あいつ昨日こたつから逃げて行ったくせに……。


こうして私とルイのこたつ争奪戦は、今冬より始まる事になったのだ――

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