『カメラをとるな!』という題名に惹かれて読み始めましたが、読み終えた頃には、その言葉の意味が胸に深く残っていました。
本作は京都・貴船の風景を舞台にした物語でありながら、単なる観光描写に留まりません。
川のせせらぎ、木々の揺らぎ、鹿との出会い、夕暮れの空気――。作者は圧倒的な語彙と感性で自然を描き出し、読者をその場へ連れて行きます。
特に印象的だったのは、「見る」という行為へのこだわりです。
スマホ越しに世界を切り取るのではなく、自分自身の目で景色を見つめること。画面を挟まずに人と向き合うこと。そのテーマが、主人公と浅子さんの関係性と美しく重なっていました。
文章は独創的で、ときに詩のように、ときに音楽のように流れていきます。好みは分かれるかもしれませんが、この作品でしか味わえない読書体験が確かにあります。
読み終えたあと、思わずスマホを置いて空を見上げたくなる――そんな不思議な魅力を持った作品です!