おれの人生設計は幼馴染のじゃじゃ馬女に破壊される

とびお

第1話 人生設計、早くも大破

「……くっそ、今日も計画通りに行かないか」


 俺、神谷悠斗かみやゆうとは、大学生活を完全にスケジュール通りに進めることを人生の最優先事項にしていた。サークルも、バイトも、恋愛も、全部五分単位で計画済みだ。

 将来の夢? もちろん完璧な就職、完璧な生活、完璧な恋愛だ。


 だが、俺の人生は早くも第1週目にして、大破寸前だということを、この時点ではまだ知らなかった。


 原因は……あの女だ。


「悠斗〜、遊ぼうよ〜!」


 天井の蛍光灯が悲鳴を上げるかのように、部屋のドアが勢いよく開いた。

 その瞬間、俺の机の上に並んでいた完璧に整理された教科書とノートが、まるでカタパルトにでも載せられたかのように床に吹き飛んだ。


「うわっ、ちょっ! 何するんだ、春川ひなた!」


「あ、悠斗の計画帳だ〜! 見せて見せて〜♡」


 そのじゃじゃ馬ぶりはもはや説明不要だ。幼馴染の春川ひなたは、小学校の頃から俺の人生設計書に小爆弾を仕掛け続けてきた、天然破壊神である。

 しかも高校時代に一度「普通の女の子」になろうとして失敗した経験まである。つまり、生粋の悪意ではなく、ただ楽しみたいだけのタイプだ。


 俺は額に手をあて、深呼吸する。

「計画通りにいかないのは想定内……いや、想定外すぎる……」


 ひなたは机の上の書類の山を掴み、そのまま空中でぐしゃぐしゃに丸めて投げた。

「わぁ〜、紙飛行機大会だぁ! 悠斗もやろう〜♡」


「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」


 部屋の平和は一瞬で失われた。机の上に置かれた俺の人生設計書が、まるで焼け野原のようになった。


「でも、これで悠斗も少しは柔軟性が身につくんじゃない〜?」


 ああ、幼馴染の口から出る言葉は、常に地雷入りギフトだ。

 俺は人生設計通りの未来を夢見ていたのに、この女は文字通り手を出すたびにそれを破壊する。


「……柔軟性も大事かもしれないけど、これはちょっとレベルが違う!」


 その時、ひなたは机に飛び乗り、俺の肩に手を置いた。

「ねぇねぇ、今日さ、映画行こうよ! ホラーかラブコメか、どっちにする〜?」


 俺は必死に抵抗する。

「いや、今日は……えーと、俺、計画通りに……」


「計画? なにそれ美味しいの?」


 ……おわかりだろうか。俺の完璧な計画は、この瞬間、幼馴染のじゃじゃ馬パワーによって粉々に打ち砕かれたのだ。


 その日、悠斗は初めて知った。

「人生設計って、他人に握られるとこうも無力になるのか……」


 そして心のどこかで、この破壊神と過ごす時間が、まさか楽しくなるとは思ってもみなかった。


 だがそれは、まだこの第一話の最後のカットだ。

 明日、もっととんでもない事件が待っていることなど、悠斗は知る由もなかった——。




------

♡の応援ボタンを押していただけると励みになります。

コメントや共有、フォローなども嬉しいです。

宜しくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る