荒神録─ Demonic Divinity Saga ─ No Fear, No Pain

@HasumiChouji

プロローグ

沈黙の報復

「ねえ、そっち、大学の方、どんな感じ?」

 夜中に事件現場を回っていると、相棒の関口ひなたが、そんな事を言い出した。

「どんな感じと言われてもなぁ……。そっちは、どうだ?」

 関口は、印を組んで何かを唱える。

「そっちって、どっち? あたしの大学キャンパス・ライフ? それとも、ここの状況?」

「両方だ」

「ここの状況は……他と同じ。大学の方だけど……何か、しょうに合ってる気がすんなぁ……。あたしも高校に行っときゃ良かったかな?」

「大学と高校は違う。連休が明けたら、高校の頃に下手に成績が良かった奴らの中から、高校までとは勝手が違ってるせいで五月病になるのが出る頃だろ」

 一家殺害事件の現場になった被害者自宅を、警察が仕掛けた監視カメラの死角を縫いながら出る。

「そんなモンなの?」

「そんなモノだ。視野が広まるかもと思って高校に行ったは良いが……私の視野を広めてくれたのは、高校以外で出会った知り合いばっかりだ」

「それ、あたしも入ってる?」

「何度言わせる? お前は、誉められ過ぎて調子にのるとドジこくタイプだ」

「え〜、あたしも少しは成長してるぜ」

「しかし……ここも手掛かり無しか……」

 私は、さっきまで居た犯行現場の家を振り返り、そう呟いた。

「まったくだ……」

 私達が産まれる以前から……この世界では、「異能力者」による犯罪が溢れ返っていた。「異能力者」による犯罪に対処する別の「異能力者」も同じように山程居る。

 だが……大学に入って約1ヶ月後、普段住んでいる戸畑から、高校の頃に双子の妹と一緒に住んでいた団地に「里帰り」してみれば……地元(一応)の久留米で連続殺人事件が起きていた。

 現場には、残留魔力なし……つまり、異能力者の中でも、一番メジャーな魔法・呪術・霊能者系ではない。銃弾その他の特殊な武器も使っておらず、その方向からの手掛かりも無し。

 警察が把握している情報は、ほぼ2つ。犯人が、もし男性だとしても、かなり小柄……おそらくは女性という事と、武器も何も使わずに素手か、たまたま犯行現場に有った物を武器代りに使って殺している事だけだ。

「なぁ、これ、あたしらの仕事か?」

「気になる事が有る」

「何?」

「ヤクザの安徳グループを覚えてるか?」

「あたしらがコンビ組んだ直後に潰した組だろ?」

「被害者は、そこの関係者ばかりだ」

「いや……被害者には公安の元刑事とかも居なかっ……おい、まさか……」

「殺された公安の元刑事は、安徳に真っ先に取り込まれた奴だ。そして……そいつは

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