天使になれない

紺野真

天使になれない

夢から醒めたら、少し髪が長くなったきみが笑いかけてくれる

光の中で。キスをして

そこで夢から醒めるの。いつも

起き上がった身体はいつもの死に損ないの、いつもの私だ


愛が誰しもにとって平等ではない。ことを仕方がない、と捨て切る残酷さで太陽は昇る。

罪悪感と恥じらいを月がただ、ゆるりと見下ろした。私たちのことも。


ヘイロウ。首に巻きつけて、できない、できない、情けなくって泣いている。(本当は怖いの?)(少し眠らせて)


きみはいつも。欲望にまみれて腐った春をずっと抱きしめて離さない

私はいつも。誰にもきみを笑われたくないと思うんだよ

後ろ指さされることに慣れた、私にだから守りたいものがある。


きみはいつも笑って ひとりで絶望に対峙した過去を丸ごと隠して。

だから幼いきみの傍まで行くんだ

膝と膝をくっつけて、ごめんね

ごめんね。くしゃくしゃのハンカチしか持ってない、涙を拭いて

真っ赤な嗚咽と涙、なみだがわかるよ。わかりたいよ。

きみと私の水たまりにも、いつか文明が宿るでしょうか


おやすみのキスをして

昨日の私を毎朝殺して。ぎりぎり立ち上がる

私たちの瞳の中のかすかな青が、日に日に薄れていく、気付かないふりを照らされる。


きみはいつも笑って

いつも笑って

そして鈍い光になるんだ

そのためならば手を貸すから


あの日のヘイロウへ。

きみを守っていて!

次こそは正しく生きられますように。

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天使になれない 紺野真 @konnomakoto

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