声を拾う家
夜道を歩いていると、古びた木造の家の前に出た。
窓は板で打ち付けられているのに、なぜか中から笑い声が漏れてくる。子供の笑い声、女の囁き、老人の咳払い――いくつもの声が重なっていた。
吸い寄せられるように玄関に立つと、鍵はかかっていなかった。扉を開けた瞬間、音は止む。
代わりに、床に散らばる古い電話機や留守電のテープが目に入った。ひとつ拾い上げて再生すると、はっきり自分の声が録音されていた。
「……まだ、外にいる」
記憶にない。けれど確かに自分の声だった。次の瞬間、玄関の外から足音が近づく。
カラン、とドアノブが回る音。
振り返ると、扉の向こうから「自分の声」が囁いた。
「開けてくれ」
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