過去のやらかしと野営飯
琉斗六
1-1
夕暮れ時、ランスはギルドにクエスト達成の報告に、寄った。
「ランスさん、ありがとうございました!」
「ああ、これから頑張って活躍しろよ」
15歳になったばかりの少年と少女が、ランスに向かって深々と頭を下げる。
ランスは手を振り、彼らの背を見送った。
「ランスロットさん、ご苦労様でした」
王都の冒険者ギルドの受付嬢は、ランスの差し出したタグを受け取り、クエスト達成の認定をすると、報酬を支払ってくれる。
「また、次があったらよろしくな」
「ええ、ランスロットさんの指導は評価が高いので、次もすぐにお願いできると思います」
決して多くもないが、しかし生活をするのに困らない程度の報酬を受け取り、ランスは受付を離れた。
ランスことランスロットは、
若いころはストロベリーブロンドだった髪に、いまは白いものが混じりはじめた。
体も動くが、無理が利かないことを思い知らされる。
とはいえ、今のランスは最前線の冒険者ではない。
一応ギルドに登録はしているが、ダンジョンを攻略したり、村を荒らす魔物を撃退したりといった、荒事とは無関係だ。
ブルーグレイの瞳に人好きのする笑顔。
新しく冒険者への道を踏み出した
たまにダンジョン攻略組のサポートをすることもあるが、その依頼件数もめっきり減った。
今や冒険者ギルドでは "
──収入もあったことだし、今夜はちょっと晩酌するか。
──と決まれば、どこで夕食にするか? "踊る兎亭" のうさぎのシチューとミードにするか、 "山羊の蹄亭" の串焼きとエールにするか……?
そんなことを考えながら、冒険者ギルドから出ていこうとした時。
ランスが出入り口にたどり着く
手足が長く、黒髪に空を切り取ったような青い瞳をした若者だ。
身につけている装備品の数々はどれも希少な魔物素材で作られた、一流の冒険者の持つ品ばかり。
彼が歩みを進めると共に、ざわめきのような囁き声が、場にいた冒険者たちの間に流れた。
驚きと畏れ、羨望と嫉妬──視線と噂が屋内を満たす。
認めざるを得ない凄腕への尊敬と、どうしても拭えぬ妬みが、濃く滲んでいた。
「ランスロットさん! お久しぶりです」
その、皆の注目を一身に集めていた若者が、自分に話しかけてくる。
意味がわからず、ランスは数秒、相手の顔を見つめていたが。
「あ、ユーリイか?」
「はい! ご無沙汰してます」
ニコッと笑ったその顔は、あの頃と変わらない無邪気さを宿していた。
次の瞬間、ユーリイはためらいもなくランスの手を取り、がっちりと握りしめる。
ただの挨拶にしては、熱がこもりすぎている握手だった。
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