鏡
しずかな夜のひとすじの光が
硝子の奥をやさしく染めてゆく。
そこにはまだ誰も知らぬ夢が
花びらのように揺れていた。
映し出された面影は遠い時を映す幻となり、
こちら側の私はその幻に頬を寄せる想いとなる。
ふたつの気配が重なったとき、
境はほどけ、甘やかな光があふれ出す。
その瞬きは星屑の雫となり、
吐息は夜の香りをまとい、
胸の奥へ静かに降りそそぐ。
どうか
この甘美な幻影が
永遠の花弁のごとく
私の深奥に沈みこみ、
消えることなく煌めきつづけますように。
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