【ASMR】ウメチャ・ズケンヌのご奉仕

加須 千花

第1話 お身体洗っちゃいます。

 //SE ギィィ………(扉が開く音)


「お帰りなさいませ、キムチィラ姫様。

 姫様のメイド、ウメチャ・ズケンヌ、お帰りを待ちわびておりました。

 だって、キムチィラ姫様、狩りに出かけておしまいになるんですもの。

 このコメバンザイン王国は安全ですが、万一、落馬したりしたら、と、心配で………。

 まあ。鹿を射止めたのですか?

 男勝りなキムチィラ姫様ですこと。

 満足なさったなら、その狩りの衣装を脱いでくださいませ。湯浴みの準備をしてございます。」


 //SE さらさら………(衣擦れの音)


「キムチィラ姫様、なにか浮かない顔をなさってますね。

 ふふ、わかりますよ。

 あたしはずっと、姫様専属のメイドなんですから。」


 //SE さらさら………(衣擦れの音)


「まあ。ライス王子様の奥様、タクアンヌ妃に、獲物の鹿を横取りされたのですか。

 お可哀想に。それは腹立たしいですね。

 いさかいになったのですか?

 ぐっと我慢なさったのですね。

 えらいですわ。心身ともにお疲れですね。

 では今日は、このウメチャ・ズケンヌ、いつにも増して、念入りに姫様を癒やしてさしあげます。

 え? いつも通りでいい?

 ズケンヌをメイドとして信頼はしているが、ズケンヌの念入りは時々変なことをされるから嫌だ?

 ほほ、遠慮なさらずに。」


 ズケンヌの、ほほ、という笑い方は、口の前面でなく、喉奥にかかる笑い方である。

 ココ、と狐が笑うような笑い方で、ほほ、と笑う。コケティッシュに聞こえる笑い方。

 これは、今後、ほほ、と笑う時に共通である。


「姫様のお疲れをとってさしあげるのは、このズケンヌの大事な仕事です。くすくすっ。」


 ズケンヌは嬉しそうに、愉悦がもれてしまった、という忍び笑いをする。


「さあ、すべて衣装をほどきました。」


 ズケンヌの声はうっとりする。


 「十六歳におなりの、キムチィラ姫様。

 どこからどう見ても美しいですわ。」


 //SE ちゃぷん(手をお湯にいれて確認した音)


「お疲れでしょうから、お湯加減は、すこし熱めにしておきました。

 甘い甘い花の香り、イランイランと、爽やかな紫の花、ラベンダーと、土臭い匂いで落ち着くパチュリを、蜂蜜と一緒にお湯に入れました。」


 //SE ちゃぷ………、ぱちゃん、ちゃぷ(キムチィラ姫が湯船につかった音)


「抗菌、抗炎症、深いリラックスができる、夜にぴったりの香りです。

 蒸気にのって、香りがあがってきたのを楽しんでください。

 さあ、ゆっくり深呼吸なさって。」


 深呼吸。

 

「すうぅ………、はぁぁ………。

 肩までつかってください。かわいらしい桃のような乳房がまる見えになってますよ。」


 //SE ぱちゃん!(キムチィラ姫があわてて肩までつかった大きな水音)


「くすくす………。」


 キムチィラ姫ににらまれても、ズケンヌは喉をならして楽しそうに笑っている。


「姫様。お立ちください。」


 //SE ぱちゃん。(湯船でキムチィラ姫が立ち上がった音)


「ほぅ………。」


 キムチィラ姫の裸身を眺め回したウメチャ・ズケンヌの唇から、うっとりしたため息がもれる。


「さあ、お身体を、この海綿スポンジで洗っていきます。

 華やかな花の香り、ジャスミンと、ラベンダーの香りがついた、オリーブオイルの石けんで泡だてます。

 ジャスミンは自信のない時に心を明るくしてくれる香りで、お肌の乾燥にもいいんですよ。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジを泡立てる音)


 「この香りはお好きですか?」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジを泡立てる音)


「ふふ、良かったです。

 では、お背中から洗っていきます。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「優しく、ゆっくり………。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「円を描くように、肩甲骨のまわりを洗います。ここ、お疲れですよね?」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「肩も、腕も………。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「このお尻………。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「右足をすこしあげてください。足首も洗いますからね。

 あたしの膝に足を。」


 //SE ぱしゃり(水音)


「足の指の間も、綺麗にしますよ。」


 //SE わしゃわしゃ、わしゃ、わしゃ、わしゃ………(五指を洗うため、リズミカルな間があく)


「足の爪のゴミも、オレンジスティックで取り除いておきます。」


 //SE しゅっ、しゅっ………(木の棒が爪の間をとおりぬける、軽い音)


「はい、いいですよ。反対の足も。」


 //SE ぱちゃ、ぱちゃん(足をあげた水音)


「膝裏から、ふくらはぎ、すね。ぜんぶ綺麗にします。海綿でなで上げると………。気持ちよさそうですね。ふふふ。

 ああ、なんて美しい姫様におなりでしょう。

 金色の巻髪。ブルーアイズ。」


 //SE しゅっ、しゅっ………(木の棒が爪の間をとおりぬける、軽い音)

 //SE わしゃわしゃ、わしゃ、わしゃ、わしゃ………(五指を洗うため、リズミカルな間があく)


「ミルクを溶かしたような滑らかな白い肌。

 若さがはち切れそうな美しい肢体。どんな殿方をも虜にすること間違いなしですわ。

 さ、足を戻しますよ。」


 //SE ぱちゃ、ぱちゃん(足をさげた水音)


「お腹も洗います。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「え? あたしはどうして、そんなにキムチィラ姫様を褒めるのかって?

 心からそう思っているからですよ。

 あたしのほうが、大人っぽい顔をしてるって?

 ふふっ、光栄です。

 そうですわねぇ………。たしかに、あたしのほうが二十歳と年上ですし、言い寄ってくる男も片手の数では足りませんが………。

 キムチィラ姫様は、可愛らしい、夢見がちな乙女のような顔をなさっています。無垢であどけない瞳を、殿方は好ましく思うものですよ。

 きっと、来月、結婚式をあげる、隣国、シナモンロ・オル王国のフリカケン皇子も、そのように思ってくださるはずです。

 このかわいい桃のような乳房も……。」


 //SE わしゃ………わしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音、繊細にゆっくり)


「気に入ってくださるはずです。あっ!」


 //SE ぱしっ! (手をはらいのける音。)

 //SE わしゃっ(海綿スポンジが床に落ちた音)


「申し訳ありません、つい、可愛らしい乳房のさくらんぼを重点的に洗ってしまいました。

 手を叩かれたので、海綿を落としてしまいましたわ。すぐに拾います。」


 //SE わしゃ(海綿スポンジを拾った音)

 ズケンヌ、謝りつつも、余裕のある態度。顔には含み笑いがある。からかうような声。


「………どうなさったんです?

 そんなにあたしのことを見て。

 あたしの胸、気になります?

 ふふっ。

 あたしのほうが大きいですものね。姫様は小柄。あたしは背が高いですし、年上ですからね。

 姫様は十六歳、これからもっと成長しますよ。

 あたしのように、殿方に毎夜揉まれたら、大きくなるものです。

 くすくす………。」


 おかしくてたまらない、というようにズケンヌは笑う。


「どうしてあたしは、こう言ってからかうのかって?

 楽しいからです!

 さあ、納得したら、首を洗いますよ。すこし上をむいてください。」


 //SE わしゃわしゃわしゃ………(海綿スポンジが皮膚をこする音)


「輝くようなデコルテ、ほっそりした白い首。服から出ている部分なのですから、よくお手入れして、美しさに磨きをかけないといけません。

 それにはまず、清浄にすることが、美容の土台です。

 次は洗髪です。」











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