第6章:日本対アメリカ代表との戦い因縁
アリーナの照明が一段と強く輝き、観客の歓声が轟いた。
「続いて、日本代表対――アメリカ代表!」
コートに立つのは、イーグル.Jを筆頭とした全米最強の四人。
シルキーがボールを持てば、流れるようにシュートが飛び、アンドレが構えればリバウンドはすべて彼のもの。
そして、ウォッチャーの視線が走るたび、相手のフォーメーションは読み取られ、無慈悲に切り裂かれていった。
序盤、日本は防戦一方だった。
NOVAのドライブも、QUEENのクロスも、ことごとく止められる。
「ちっ……全然通じない!」
QUEENが歯噛みする。
Hare Showがフェイクで揺さぶろうとしても、イーグルが冷静にカバーに入り、隙は見えない。
だが――。
スコアボードを見て、NOVAは首をかしげた。
圧倒的にやられている感覚なのに、点差はわずか5点。
「……なんで?」
同じ疑問を抱いたのは、YUTAだった。
ベンチで汗を拭いながら、彼は昨日のアーカイブ映像を思い出す。
「そうか……」
「みんな、聞いてくれ」
YUTAの低い声に、三人が耳を傾けた。
「アメリカは完璧に見える。でも、イーグル以外……動きがどこか鈍い。
昨日のアル=ナジール戦の時と同じ違和感だ。
ウォッチャーも、シルキーも、アンドレも――反応が遅れてる」
「確かに……シルキー、シュートまでの溜めが普段より長い」
QUEENが気づき、目を細めた。
「つまり……イーグル一人で持たせてるってことか!」
後半。
NOVAたちは一気にギアを上げた。
QUEENのクロスオーバーが火を噴き、Hare Showの奇抜なフェイクでシルキーを惑わせる。
YUTAは冷静にコート全体を指揮し、的確なパスで仲間を走らせた。
点差は少しずつ縮まっていく。
だが、要所、要所で立ちはだかるのは、やはりイーグルだった。
その読みの鋭さ、爆発的な跳躍力、そして冷徹な決断力。
まさに「万能」という言葉がふさわしい。
「強すぎる……!」
NOVAの胸を焦燥がかすめる。
だがその刹那――イーグルの視線が一瞬だけ泳いだ。
(今だ!)
NOVAは迷わず飛び込んだ。
イーグルが出したパスに鋭く手を伸ばし、スチール!
「取ったッ!」
全身を駆け抜ける電流のような感覚。
そのままリングへ一直線。
ジャンプと同時に、NOVAは空中で一度ひねり、イーグルの追随をかわす。
――シュート!
ボールは鮮やかにネットを揺らした。
歓声が爆発する。
「逆転だぁぁぁぁ!」
流れは完全に日本へ。
QUEENのドリブルブレイク、Hare Showのノールックパス、YUTAの冷静なゲームメイク。
四人のリズムが重なり合い、アメリカを押し込んでいく。
そしてゲーム終了のブザー。
スコアは日本の勝利を告げていた。
アリーナは地鳴りのような歓声に包まれる。
NOVAは息を切らしながらも、拳を高く掲げた。
(勝った……! アメリカに!)
対するイーグルは、しばし無言で立ち尽くした。
だがその瞳に宿っていたのは、敗北の悔しさではなく――確かな驚きと、敬意。
「お前の心……折れないその強さが、闇を打ち破るかもしれない」
イーグルは小さく呟いた。
その言葉はNOVAには届かなかったが、確かに未来への布石として刻まれた。
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