『模様替え』

書架をずらした隙間から

去年の埃が ゆっくり舞う

椅子は窓側へ 机は壁へ

移した先で 違う影を結ぶ


壁に掛かった写真の傾きを

そっと正す 母の手のひら

同じ場所で 違う角度から

午後の光が 襖を這う


押し入れの奥で 眠っていた

季節の隙間を 開けるたび

忘れていた匂いたちが

部屋の中を 泳ぎ始める


今 動かした家具たちが

わずかな音で 場所を覚える

変わった空間の その寂しさに

そっと耳を澄ませば


窓の外から 聞こえてくる

いつもの生活の ざわめきが

新しい部屋を そっと撫でる

風の通る道 できたなら


もう じっとしていられない

埃たちも 光たちも

変わった方角を 指さしながら

静かに 息をしている

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