就労移行支援日記
脳病院 転職斎
第1話
職業訓練校を卒業した俺は、まだ仕事をする自信がなかった。
3年近くに及んだ無職生活は、俺から労働の気力を奪っていった。
職業訓練校の人達は無事に就職していったが、俺はまだだ甘えたいと思い、障害者就労移行支援施設に通うことに決めた。
就労移行支援施設は福岡にはたくさんあるが、何か就職で有利にならないかと思い、麻生太郎ブランドの麻生系列の就労移行支援施設を選ぶことにした。
そして、事業所は博多駅前にあった。
俺は箱崎から博多まで電車で通勤することにした。
そんな利用最初の日に思ったことは、まあ職業訓練校と違って皆んな根本的に障害者である。話して分かる。
内容も職業訓練校に比べたら幼稚園みたいなものである。
たった一人を除いて、そこでは友達が出来なかった。
俺は障害者ではあるが、この人達よりまともだ。普通なんだと言う思い込みは、俺の中に壁を作ってしまった。
就労移行支援はあまりに退屈な毎日だった。
お昼は200円くらい払ってスーパーの惣菜のようなご飯を食べる。娯楽と言えば、地下で一人吸うメビウスの3mgと缶コーヒー1本。
チャレンジドアソウでは、朝10:00から午後15:00までの間、既に職業訓練校で習ったwordのおさらいや封入、ハサミで切るなどの手遊びばかりさせられる。
コロナ禍で自粛が厳しくなると、リモートで課題について話し合う。
当時、俺は、そこで出来た友達一人を除いて誰とも交流を持たなかったが、最初の頃にパフォーマンスで心を開いていたことで、俺のことを覚えてくれる利用者も少なからず居た。
しかし、就労移行支援施設ではお互いの連絡先を知ってはならないルールがある。
知ってしまったところで、利用者の誰かと深い関わりになれるかは分からないが、兎にも角にも俺には金がない。
それなのにやっていることは手遊びばかりで、去勢された家畜のようにそれに従わなければならない。談笑すら禁止されている。
こんなところに何ヶ月もいても無駄だと思った俺は、利用開始2ヶ月後には就職先を見つけ、いとも簡単に退所してしまった。
足掛け3年にも及んだ失業生活は、就労移行支援を利用したことにより秒で終わってしまった。
実に味気ない社会復帰の第一歩となった。
就労移行支援日記 脳病院 転職斎 @wataruze
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