追放二日目。私は朝から畑の草むしりに精を出していた。足元ではコロがちょこまかと動き回り、時折じゃれついてくる。作業の邪魔…いや、最高の癒やしだ。

「ねぇ、コロ。お腹すかない？」

　話しかけると、「くぅ～ん」と甘えた声で足に頬を寄せてくる。ずっと一人だった私にとって、この小さな相棒の存在は本当にありがたい。

　ふと、コロが口に小さな青草をくわえているのに気づいた。

「それ、食べるの？」

　私が尋ねると、コロは得意げに頷き、その草を口にした。途端に、その体が淡い光に包まれる。

「え？ 何が起こってるの？」

　光が収まると、コロの毛並みはさらに艶やかになり、心なしか一回り大きくなった気がした。

（もしかして、何かを食べるたびに成長するの？）

　そんなことを考えていると、今度はコロが土の中から掘り出したらしい、茶色い塊を運んできた。

「これって…ジャガイモ？」

　手のひらほどの大きさの、紛れもないジャガイモだ。コロはそれを私に差し出すと、嬉しそうに私の足元で飛び跳ねている。まるで「これを育てて」と言っているようだ。

「わかったわ。コロのために、おいしいジャガイモをたくさん作ってあげる！」

　私は決意を新たにした。

　まずは土を耕す作業からだ。道具は心もとないスコップとクワだけ。でも、私には最強の味方がいる。

　スコップを乾いた土に突き立て、心の中で強く念じる。

『豊穣の祝福（グラティアス）！』

　すると、スコップの先から柔らかな光が溢れ出し、固く痩せた土が、みるみるうちに黒々としたフカフカの土壌へと変わっていく。

「やっぱりすごい…！」

　前世の家庭菜園で喉から手が出るほど欲しかったスキルだ。フカフカになった土に、コロが見つけてくれたジャガイモを種芋として植えていく。

　そして、再びスキルを発動させた。

『豊穣の祝福（グラティアス）！』

　種芋から放たれた光が土に満ちると、一瞬で芽が出て茎が伸び、青々とした葉が茂った。そして、土の中には…！

　スコップで掘り返すと、ゴロゴロと大量のジャガイモが現れた。しかも一つ一つが、私の顔ほどもある特大サイズだ。

「すごい！ こんなにたくさん…！」

　私は一番大きなジャガイモをコロに渡す。コロはそれを抱え込むようにして、嬉しそうに「くぅ～ん」と鳴いた。

「たくさん食べて、もっと大きくなってね！」

　こうして、私の規格外な農業生活は、食いしん坊のもふもふと一緒に、賑やかに始まったのだった。