ヒールレスラー斉藤さん

「斉藤、次だぞ｣

「…はい」

男はみんなヒーローに憧れる。

仮面ライダー？

もしくは戦隊？

はたまたアニメの主人公？

いやゲームの勇者もあるかな？

ああ、例外なく俺もそうだった。

暇さえあれば鏡の前でポーズ決めてたよ。

寂しいやつって？黙れガキ。

いや俺もか。

、。

悪を懲らしめて人々を恐怖から救う、

そんな存在になりたかったんだ。

冗談じゃなく本気で。

大人になった今でも変わらない。

でも当然、現代に勇者なんて職種はない。

どうしても警察とか弁護士とか政治家、そういう話になる。

それらはまあ確かに社会のヒーローだよ？

ヒーローなんだけどさ、なんか違くない？

なんかこう、

それじゃあヒーローじゃないんだよ。

とりあえず伝わってくれ。

悪者をしっかりやっつけてやる仕事をしたい。

そして人々を笑顔にしたい。

コスプレやりきるでも満たされないし、

ライダー俳優になりたいとかでもない。

ちゃんと社会のヒーローにはなりたいんだ。

そんな時にぱっと浮かんだ。

'プロレスなら、ヒーローになれるんじゃ'

そうして今俺、斉藤一真は！

『ヒィィィルレスラー！！！！！！！

H・E・L・L斉藤の登場だああ！！！』

悪役レスラーとして、

今日もヒーローにボコボコにされている。