第9章 竜人共闘(☆3ダンジョン)

第37話 ダンジョン『検索』

 ☆1ダンジョンをクリアした次の日の早朝。


「今日もいい天気だな、冒険日和だ」


 テントから顔を出すと、肌寒い空気が肌を撫でた。

 草花についた朝露が、キラキラと輝いている。


 早朝特有の、この少し張り詰めたような肌寒さが俺は好きだ。


 寝起きから一気に覚醒する感じが、いとをかし。


 広場は静まり返っている。昨夜、遅くまでドンチャン騒ぎをしていた村人たちは、まだ夢の中だろう。


 顔を洗い、歯磨きを済ませると、俺は村の隅に待機させている建築用ゴーレムのもとへ向かった。


「『ゴーレム・起動』っと」


 購入者および権限貸与者のみが使用できる専用アプリを操作する。スリープモードで沈黙していた巨体が駆動音を立て、その両目に青白い光を灯した。


『起動しました。

 モードを選択してください』


 スマホの表示に従い、『資材回収・静音』モードをタップする。まだ寝ている人たちに配慮し、静音モードで近くの森へ木材回収に向かわせることにした。


 エネルギー源であるマナストーンを大量に補充し、森へと歩き出す巨体を見送る。


 進捗は順調だ。


 すでに10軒ほどの家が建ち、広場や大通りの整備もほとんど終えている。村人たちの計画では、今後は村をモンスターから守るための巨大な外壁を建設する予定らしい。


 最終的には、三重の外壁で村を囲むのだとか。


『ウォ○ル・マリア』

『ウォ○ル・ローゼ』

『ウォ○ル・シーナ』


 高さ50メートルにも及ぶ、巨大な壁だ。村人たちはここに『人類の楽園』を築き上げたいらしい。


 どうやら日本のアニメは、異世界転移後も愛され続けているようだ。


「よし、次は――」


 村人たちが起き上がってくるまで、まだ時間がある。俺は毎回恒例のステータス・ランキング・アイテム確認を行うことにした。


 というわけで、まずはステータスから。


==========

佐藤太一(20・男)(レベル:2)


体力: 100/100(+30)

強度: 82(+23)

速度: 91(+21)

魔力: 91/91(+30)

闘気: 95/95(+38)


恒常パッシブスキル〜

羅纏冥加らてんみょうが(弐)


攻撃アタックスキル〜

・ミニ・フレイム(Cコモン

・ゲイル・サイズ(Uアンコモン

計都之蝕剣けいとのしょくけん

・レイジ・フィスト(Uアンコモン

……魔力を闘気に変換し、拳に集中させる。


防御ガードスキル〜

・アイアン・ボディー(Uアンコモン

==========


「ステータスも順当に上がりつつ、ラスボスの使っていたスキルもゲットできたな」


 レイジ・フィスト(Uアンコモン)。


 オーガが初手で使ってきた攻撃スキルだ。

 発動すると、拳が灼けた鉄のように輝くやつ。

 これで俺のパンチ力がさらに強化された。


 しかも、俺は現在20歳。

 あと1年したら『拳で抵抗する21歳』になれる。


『もちろん俺らは抵抗するで?拳で!』


 人前では絶対に言いたくないが、1人になったらこっそり言ってみたい台詞ランキング上位である。


 くだらないことを考えつつ、

 次はランキングの確認だ。


==========

【総合ランキング】

あなたは現在20位』です。


・16 マルコ=リッチ

・17 アレハンドロ=モラレス

・18 クラウス=ヘルゲン

・19 陳美麗チェンメイリー

・20 佐藤太一

==========


「たしか、前回見たときは88位だったよな?

 おいおい、どこまで行っちゃうんだ、俺。

 このままだと、すぐに1位取っちまうよ」


 この上昇ペースなら、すぐに1位を取ってしまうだろう。ランキング1位、つまり人類最強。


 その頃には、俺の背中にも『鬼の貌』が浮かび上がっているかもしれない。


 そんな妄想はさておき、

 最後に新着アイテムを確認する。


==========

『アイテムポーチ』(新着欄)

・ヨトゥン・アックス(斧) ×1

……敵の攻撃を3割吸収し、それを跳ね返す。

==========


 新しい武器を手に入れた。

 ラスボスが愛用していた大斧だ。


 『攻撃を吸収して跳ね返す』という効果は、考察通りだったようだ。非常に強力だが、個人的には剣の方がスタイリッシュで好みなので、普段使いは愛刀『ナイト=ペイン』のままでいくとしよう。



 現状確認はひとまず終了。

 ふぅと息をついたその時だった。


「ふぁ〜。

 ……あ、おはよう、サトー」


 テントから、ルナリアが寝ぼけ眼で出てきた。

 昨晩の宴で騒ぎすぎたせいで、まだ少し眠たげだ。


「おはよう、ルナリア。

 朝食を食べ終わったら、今後の計画を練ろうか」


「ん、わかったわ」




 2時間後。


 朝食を終えた俺たちは、次の目的地について話し合っていた。もちろん、方針は決まっている。


 次は『☆3ダンジョン』だ。


 だが、問題が1つ。


「☆3ダンジョンに行きたい。

 しかし、場所が分からない」


 この世界は広大だ。

 闇雲に歩き回るわけにはいかない。


 さて、どうしたものか。


 けれど、

 その問題はミゲルが一瞬で解決してくれた。


「『i mapアイ・マップ』に課金すれば、場所を教えてくれますよ」


 現在地などを表示してくれる地図アプリ『i mapアイ・マップ』。なんと課金すれば最寄りのダンジョンをサーチしてくれる機能があるらしい。


 さっそくアプリを開いてみる。


==========

【ダンジョンサーチ】

・☆1ダンジョン 10,000G

・☆2ダンジョン 1,000,000G

・☆3ダンジョン 50,000,000G

・☆4ダンジョン 300,000,000G

・☆5ダンジョン 1,000,000,000G

==========


「どはっ、金が吹き飛んでいく……」


 課金額はダンジョンの難易度によって大きく変わる。☆3ダンジョンは5000万Gもするらしい。


 現在、手持ちは2億5000万Gほど。

 5分の1が一気に消し飛ぶ計算だ。


 金に執着はないはずなのに、元貧乏人の悲しい性か、決済ボタンを押す指が少し震える。


 ええい、ままよ!


――ティリン♪ ティリン♪(決済音)


 軽快な電子音と共に、マップに光点が灯った。


==========

【☆3ダンジョン『猿猩雲仙えんしょううんせん』】

……シュミル地方・冥公山

  徒歩:15日(転移装置を経由)

  主なモンスター:赫猿魔ゴア・エイプ

==========


「最寄りで、徒歩15日か。

 まぁそんなもんか。

 あと、シュミル地方ってどこかで見たな……あ」


 以前手に入れた『マロネの実』の説明文だ。たしか、 『シュミル地方の竜人族ドラゴノイドが好んで食べる果実』とあったはず。


 つまり、これから行くダンジョンの近くには、竜人族が暮らしている可能性が高い。もしかしたら、彼らと交流できるかもしれない。


 ちょっとテンション上がるな。


「ルナリア、次はこのダンジョンに行こう。☆3ダンジョンだから、きっと、これまでのダンジョンよりも面白いぞ」


「うん、わかったわ!

 そうと決まれば、アイテムを爆買いしなきゃね!」


「もしかしてだけど、ショッピングが趣味になってない?別にいいけど、ほどほどにしようね」


「だいじょうぶよ、安心して!」


――ティリン♪ ティリン♪(決済音)

――ティリン♪ ティリン♪(決済音)

――ティリン♪ ティリン♪(決済音)


 俺たちは、潤沢なアイテムを手に入れた。

 どう考えても、二人旅には過剰な量である。


――しかし。  


 この時の俺たちはまだ知らなかった。この「買いすぎた」アイテムたちが、後にダンジョン攻略において重要な鍵になることを。

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俺だけ初期スポーンがラスボス前だった件〜全人類総合ランキングを駆け上がり最強へ〜 マッツィーニ〜ひよこ作家〜 @matuokundao

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