回復担当お嬢様は自己肯定感低すぎて困る

モンブラン博士

第1話 落ち込んだエリザベスは雨の中を歩く

エリザベス=フォン=タルトレットは肩を落として道を歩いていた。

雨が降っているが傘も差さずに溜息ばかり吐いている。


濡れた茶色の長髪からはポタポタと雨が滴り落ちて服はずぶ濡れだが不快よりも気分の落ち込みが勝っていた。


瞳よりも大きな丸眼鏡が雨に濡れて視界を曇らせる。

白い息が吐きだされ、濡れた身体の冷たさに気づいたエリザベスは自分を細腕で抱きしめ震えていた。


タクシーに乗ろうかと思ったがお金がもったいないと再び歩き始める。

にわか雨だろうと彼女は考えていた。長靴に染み込み靴下が水を吸っていく。

どれほど不快でも辛くても彼女は目的地まで歩き続けるしかなかった。


一体どれほど歩いたか忘れてしまったが、雨が止んだことに気づいたエリザベスが顔を上げると古いアパートが視界に入った。どうやってたどり着いたのかは覚えていないが、間違いなく彼女が行きたかった場所だ。


急いで階段を駆け上がり表札を見つけてインターホンを押すとドアが開く。


「誰ですの?」


出てきたのはピンクのパジャマ姿のムース=パスティスだった。

まだ寝ぼけているのだろう何度も目を擦ってから大きな青い瞳を見開く。


「エリザベス様⁉」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る