49話 グラーノフ奪還戦 1日目 一騎打ち
「全軍、あのじじいからやるぞ」
ホーネッカーはファタールの挑発的な言葉に笑みを浮かべると、無骨な声を張り上げる。
「兵力は、我が軍が圧倒している! 落ち着いて、伍人隊を作り、数ですり潰してやれ」
いくらファタールの隊が精鋭といえど、戦争においては数が重要だ。数で圧倒される状況に追い込まれれば、戦争では瞬時に殲滅されることとなる。だが、圧倒的な兵力差により、ファタールたちが苦戦をしようとも、本陣から援軍が派兵される兆しは見られない。凄まじい熱気の中、沈黙が戦地を貫く。
「お前たちの大将は、どうやら愚将のようだな」
ホーネッカーは白髭をなでる。途端、ホーネッカーの姿が消える。ファタールがハッと見ると、護衛兵と共に、凄まじい速さで進軍してきていた。その機動力は、まさに風のごとし。次々と骸の山が築かれていき、ホーネッカーの握る大薙には赤い血が染みこんでいた。ファタールは握る魔剣に汗をたぎらせながら、顔に焦りの色を浮かべていた。
(まずいな……。あの化け物を止められるのは、俺とあいつくらいし)
ガン
戦斧がホーネッカーの首めがけて、雷鳴のごとく振り下ろされる。ホーネッカーはその大薙で、その斬撃を受け止める。旋風が吹き抜ける。
「ハハハ、これを受け止めるとは、面白い。手合わせ願いたい」
「一騎打ちか。今どき、古風なことを」
ホーネッカーは面白そうに、その男を見上げた。身長はゆうに2mを超えたその巨漢は、長い茶色の髭に特徴のある彫りの深い顔をしている。
「ドワーフか。職人というイメージが強かったが、貴殿のような武人もいるのだな」
「ハハハ、たしかに我が一族は、気難しい連中も多い。だがのう、まれに生まれるのだよ。自身の中に滾る戦士の血を抑えられぬ、戦バカが」
そう言うと、その巨漢は、斧をホーネッカーの前に突き出した。
「我はドワーフの戦士・ガンニバル。かの人魔大戦。ドワーフを指揮し、戦った英雄クリムゾンを祖とし、父アムレッド・母ティアラのもとに生を授かった。この命、神聖なる戦闘に捧げることを誓おう」
「フッ、最近の戦争には、お前さんのような男はいなくなった。武器の発展だ、魔法だ、なんだというが、やっぱり、軍人たるもの、こういう気概がなくてはなぁ」
ホーネッカーは、破顔した。そして、ガンニバルと同様の言葉を紡ぐ。
「我はホーネッカー。カール帝国の軍人として、60年もの間、戦地で生きてきた。母も父も知らない。わしが2歳の時、アルビオン王国の侵攻により、無惨にも殺された。以来、孤独の身となったわしは、少年兵として戦争に従軍し、その才覚を認められ、カール帝国元大将・白翼のネメシスに拾われた。わしの長い生涯は、戦争とともにあった。貴殿のような、誇りある武人に出会えたことを感謝しよう。この命、貴殿との戦争に授けよう」
長薙を、ガンニバルの前に突き出す。両者ともに、にやりとした笑みを浮かべる。
ドガーーーーーーンン
凄まじい爆風とともに、初日最大の壮絶な攻防が始まった。
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