第3章 カール帝戦

36話 序章

 カール帝国。


 将軍ガイウス・カールは、酒宴を開いていた。


 美女を侍らせ、高級な肉や魚が机の上に豪勢に並んでいる。この男はカール帝国の最大の権力者であり、独裁者であった。


 雄々しい巨体に筋肉の鎧を身に纏った彼は、まるで獅子のように獰猛に肉を食らっていた。


 彼は暴力の天才だった。民主主義を唱えていた既存の政府を17歳という若さで転覆し、彼を支配者とする軍事独裁政権を樹立。他国からの軍事干渉を圧倒的な武力で退け、国内の脆弱な軍備体制を一掃するために、戦争に対して不介入の原則を貫いた。


 27歳の若きカリスマに多くの者が心酔し、様々な才能が彼のもとに集っていた。



「将軍、戦争の準備ができました」


 ルシウス・ドラキオン。


 銀の長髪を携えた隻眼のエルフが、ガイウスに跪き、右手を差し出す。


 エルフは魔法に優れている一方で、同時に迫害の対象でもあった。


 1000年前の魔界対戦。


 魔王四天王の先鋒として猛威を振るった、霧の魔道士キス。


 彼女はエルフ魔法侵攻軍の長で、凶悪な古代魔法で人類を追いつめたとされる。キスに殺された人類は多く、それが怨恨を生んだ。戦争が終わるとエルフは奴隷身分に落とされ、綺麗な容姿をした魔族として売買されたのだ。


 ルシウスも宮廷奴隷として悪徳政治家に飼われていた。その美しい顔から、その政治家に性的な奉仕をさせられたこともあった。しかし、若きガイウス率いる救國軍により、その政治家は処刑された。


 ルシウスはガイウスに仕官し、その聡明な頭脳と強力な魔術を買ったガイウスにより、魔法梯団将軍兼カール帝国軍事顧問の任を与えられたのである。


 ガイウスがその手を取る。観衆が盛大に声を上げる。その声は熱を帯び、徐々に音量を上げていった。



「粛に」


 静かに、されど雷のような声が轟く。


 マルクス・レギオン。


 ガイウスの持つ最強部隊「太陽部隊」の隊長であり、軍事提督の任を与えられた将軍である。


 武で彼に叶うものはいない、この国最強の戦士。


 大砲すら弾き返すほどの鋼鉄の筋肉、そして大剣【慚鬼ざんき】と呼ばれる鬼龍シリーズの大刀を振るう。彼一人だけで一部隊を殲滅させうるとも言われる猛将である。


 彼らを一瞥いちべつし、ガイウスがにやりと笑う。


 ガイウスが玉座からゆっくりと立ち上がる。


 悪魔のように気高く、なおも凜々しい。ルシウス、マルクス、これほどの強者ですら、この男に勝つビジョンが見えなかった。


 酒瓶を地面に叩きつける。


「野郎ども、始めるぞ」

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