はねだ
ラプラスAki
はねだ
はねだが死んだ。
自宅でひっそり息を引き取った。
たった1人で。
彼の人生はなんだったんだろう。あんなに人を想い愛し、そして報われなかったやつは人類史でもいるかいないか。
はねだは俺にとってかけがえのない命の恩人だ。
かつての俺は酷かった。もうすぐで人生を棒に振る寸前、はねだと出会った。はねだの第一印象は本当にこいつは人間か? と思うほど暖かく優しかった。しかし同時にそこに付け込まれて、借金やら何やらを押し付けられていた。はねだの優しさに救われた俺は片っ端からはねだを食い物にするやつらをのしていった。物理的にも法的にも。そのおかげでずい随分勉強した。今やその時の知識やらが生きている。そういう意味でもはねだは俺にとって救世主だった。
葬式には遠縁の親戚のおばあちゃんが1人。その後にははねだが居た孤児院の園長。そして数人の同級生達。
多い方だろうか? よく分からない。
「彼。どこにいたんだ? 学校を出てって以来連絡が取れなかったんだ」
「ずっと生きてましたよ」
俺の一言に同級生がたじろいだ。彼の言葉はもちろん心配してのこと。しかし俺の口から出た言葉は辛辣だった。なにも余裕がない。まともに答えられない。それから誰も俺には話しかけなかった。
遺骨は俺が預かることにした。せっかくきた親戚のおばあちゃんも、いつの間にかいなくなっていた。
俺が生まれること、誰も望んで無かったんだよね
そんなはねだの言葉を思い出す。
はねだは散々利用されて、借金も負わされた。それでもあいつは人を恨まなかった。
なんか恨む気にならなくて、、、
はねだはそう言って笑っていた。
遺骨を受け取ったものの、どうしようかと悩んでいた。俺もまた、親戚から見放され、そして両親を知らない。自分の家の墓に入れようにも、何処にあるのかわからない。
公園のベンチで遺骨を抱えて座り込んだ。
どうしたものか、、、
すると突然鐘がなった。見ると公園の中に教会があり、そこの鐘が鳴っている。
そう言えばはねだはよく教会へお祈りに行っていたな。
また寂しさが込み上げる。
神様がいるのならなぜ彼にこんな仕打ちをするんだ。と責めた。分かっている。何を言っても変わらない。そんな事を考えていると空から白い羽根がふわりとはねだの骨壺に降りた。なんの羽根だろうか? 鳥のものでは無いような、、、
ああ。
そうか。
そうなんだ。
「あいつは天使になったんだ」
俺はどこまでも青く透き通る優しい空を見上げていた。
彼の幸せを祈りながら。
了
この物語はフィクションです。
文中に出てくるネガティヴな言葉は現
実において作用しません。
はねだ ラプラスAki @mizunoinori
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