元、薬師の天才少女は、転生して救国の乙女になりました?!

真白キサ

第1章 始まりの話

第1話 前世の記憶

前世の記憶


その日は、朝からなんとなく体調が悪かった。


連日続く雨のせいなのか、日々の疲れのせいなのか。


とにかく頭がふらふらとして、仕事も手につかないほどだった。


でも、そんなことも言っていられない。


私には3つ下の妹と、5つ下の弟がいる。


長女として、私は稼がなければいけないのだ。


「お母さん、いってきます。」


「えぇ・・・気を付けてね。今日も雨が酷いみたい。」


「わかってるよ。大丈夫、崖には近づかない。」


そう声をかけると、お母さんは安心したように微笑んだ。




平民の暮らしなど、みんなこんなものだ。


家族みんなで支えあって生活をしなければ、明日にも困窮してしまうほど。


でも、この国はまだマシなのだ。


隣国では流行り病が蔓延していて、平民どころか貴族まで困窮しているという話が聞こえてくるほどだ。


他国も同じような状況らしい。


それでもこの国が病に侵されないのは、王宮でずっと祈りを捧げている聖女がいるからだと皆が言うけれど、私はそれだけじゃないと思う。


平民の住む区域でも上下水がしっかり整備されていて、国に管理された清掃係が毎日清潔を保ってくれている。


不衛生な部分が少ないからこそ、この国は病に侵されない。


これはこの国の教えでなく、私の前世の記憶からの知識だ。


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