醒めない夢と夢の続き
@kinmokusei93
第1話 夢のはじまり
屋敷の中庭を彩る淡くも鮮烈な桜の花。
見事に咲き誇るそれを、ただ立ち尽くし眺めているお館様。
全てを悟っているかのような、いや、諦めているかのようにも見えた。
この場にはお館様と私、それに名はわからないが庭の隅にお付きの者が一人。
お館様は一言も発さず、時が止まったようなこの空間は驚くほど穏やかだった。
時折涼やかな春の風が花びらを鳴らすたび
次第に私の心は恐怖と後悔に荒れていく。
見上げるお館様の背中のなんと大きなことか。
この命を捧げ、生涯を尽くし、成すべきことの礎になることこそ至上の喜びと疑いもせず生きてきたはずなのに。
それが、なぜこうなった?
滝のように流れる涙と嗚咽で何一つとして言葉にならない。
永遠に尽きることのない悲しみと、地獄ですら償いきれない後悔、そして大願成就の喜びという求めざる感情に押し潰される。
申し訳ございません
申し訳ございません。
己の魂を叱責し、喉から絞り出した音はこれだけだった。
お館様、申し訳ございません。
どうか、どうか
蘭丸、と名付けられた私の最初の業。
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