第4話後半
「私たちに気にしないで行ったら、よかったのに」
凛也は陽翔の行動を見て、心の中で嘲笑う。
陽翔の動き方が、ド素人で面白かった。
戦いに不利な状況にさせないためには、相手に己の情報を与えないように、立ち回らなければいけない。
陽翔の動きは、凛也に狙われていると、丸和かりだった。
あの様子だと、戦いの経験も全くない。
凛也に狙われていると、わざと気がつかせたのは、陽翔を動揺させるためではない。
「なあ雪柰、
凛也は肩肘を曲げて、口元に人差し指を置き、親指で
「そうだけど」
予約したホテルの中に行かない。一般人を巻き込まない。優しい雰囲気から見て、思った。
その周囲に逃げ込むだろう。
内側の視界が悪くて、夜間だと人目につきにくい場所が多い。高い塀に、樹木が遮ってきているからだ。
凛也は、研ぎ澄まされた直感によって、脳裏に蘇る。
陽翔がこの店内できた時に、止まっていたことだ。
『どうかされたんですか』
『あの俺って、ここにきたがあって』
『うーん、君は初めてですよ』
『今のは忘れて』
『え、はい。それでは、席にご案内します』
もしかして、陽翔って記憶喪失なのか。
陽翔を怯えさせたことで、凛也にとって、不利な状況を生み出してしまった。
冷静に考えろ。
陽翔が、凛也の元に必ず来る。
さて、動くかと扉に手をかける。
「お兄ちゃん、どこに行くの」
「あいつを追うんだよ。道に迷ったら、面倒だからな」
「お兄ちゃんらしくないな」
☆☆☆
陽翔は凛也から逃れるために、あちらこちらに逃げ回った。
ふと、住宅街を見上げる。
陽翔は冷や汗をかき、不安になる。
ここはどこだ。
記憶喪失しているので、この辺りの地形が全くわからない。
『碧波住宅街』という看板を見つけても、意味がない。
『レオ、黙っていないで! 助言してくれよ』
陽翔は苛つきながら、レオを呼びかける。
だが、レオは無反応だった。
永琉の声もしない。
ネックレスを念じれば、ザーッ、ゴオオッと連続した。雑音と不快な音で、耳障りに感じた。
凛也がネックレスを結んだときに、偽物とすり替えられてしまった。
陽翔の首と足に違和感があることに、チョーカーだと知る。
両足には、ホルスターが
右は束のナイフに、左は拳銃が入っている。
そこから、永琉の力を感じ取った。
ネックレスを初めてもらった時から、永琉が用意してくれていた。
『大事にしてね』
陽翔の頭の中に、永琉の笑顔が映る。
レオの言う通りに、警戒しすぎなければよかった。
陽翔は
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