プロローグ④:人間達の反撃
西の丘で玖月が小競り合いをしている間、魔族に向かって行った人間達は、大きく人数を減らしながらも少しずつ魔族の数も減らしていた。
しかし、戦況的には人間の犠牲者に対して魔物の犠牲者は少ない。
人間が10人犠牲になって、やっと魔物を1体倒せるといったところだろうか。
だが、人間達は一向に怯まない。
しかもその目には恐怖もない。
一人一人が、何かを信じ、誰かに何かを託すような、そんな目をしている。
元々個人主義の魔族にはそんな目をした者はいない。一人一人が自らの意思や思想や感覚で戦っている。
魔族にとって、人間達が放つ気迫は未知のものだった。
そして、その未知の感覚に魔族は徐々に気圧され始める。
本当に少しずつではあるが、でも確実に人間達は勢いづいていった。
そのおかげか、今では人間がが7人犠牲になって、魔物を2体倒すくらいの勢いになっていた。
この勢いを察知した白銀の騎士は更に士気を高めるため言葉を放った。
「このままだ!まだしばらく耐えてくれ!仲間の思いは生きてるものが背負って力に変えるんだ!今だ!今こそが守るべきもののために命をかける時だ!!!」
白銀の騎士が檄(げき)を飛ばした直後、その白銀の騎士の元へ1人の女性が駆け寄ってきた。
「報告します。準備が整ったようです。間もなくとなります。」
女性が白銀の騎士に伝えると、白銀の騎士は嬉しそうに言葉を返した。
「やっとか!コレでこの戦いの終わりが見えてきたぞ。報告ありがとう。
私は指揮官として命を賭して戦っている者達を放ってはおけない。前衛まで行ってこのことを報告し戦いに身を投じる。
君は安全なところまで退却しなさい。そして、後からこの地を訪れてここでの戦いが終わったことを確認し報告するんだ。」
「しかし!それでは騎士様が---」
「いいから行くんだ。コレは指揮官としての指示だ!」
白銀の騎士は、何かを察して食い下がろうとした女性に対し、普段しないような強い口調で静止する様に言い放った。
白銀の騎士の覚悟を感じ取った女性は、悲しみを我慢するかのように薄っすらと笑みを浮かべ返事をした。
「わかりました。ご武運を。」
そう言って振り返ると、女性は白銀の騎士に背を向け、悟られないように涙を拭った。
「ありがとう。愛しい人。」
白銀の騎士はいつもの優しい口調戻り、周りの仲間達には聞こえないよう、その女性にだけ伝わるように言った。
白銀の騎士は、その場から去っていく女性の背中をしばらく見つめると、一度だけ空を見て戦場に向き直した。
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