Track4 1度きりの、高2の花火大会を君と 前編



○花火大会の会場の最寄り駅(夜)

広町美桜が浴衣姿で待ち合わせ場所に向かう。


//SE 人々がごった返す喧騒

//バックSE 下駄で歩く足音 ※開始


「(深呼吸)すぅ……はぁ……」


//バックSE 下駄で歩く足音 ※継続 ペースダウン

//SE 手提げ袋からスマホを取り出す音

//SE スマホの電源を入れる音


//心の声加工 ※開始


『……良かった。少し早く待ち合わせ場所に着きそう』


//SE スマホの電源を切る音

//SE 手提げ袋にスマホを入れる音

//バックSE 下駄で歩く足音 ※継続 元のペースに戻る


『ふふ。一緒に花火を見に行くの、久々だ。

 もう二度と、こんな日は来ないと思ってた。

 ……昔は毎日会えるのが当たり前だったのに。

 でも、いつの間にか会えない日が増えて。

 気が付いたら疎遠になってた。

 次第に話さないのが、当たり前になっていった』


//バックSE 下駄で歩く足音 ※継続 人を避ける際の音


『会えなくなって初めて、私は君に救われてたんだって気付いた。

 楽しいことは一緒に楽しんでくれて。

 超絶ブルーな日でも、君と話したら気にならなくなってた。

 話すだけで……私は沢山の元気をもらってた』


//バックSE 下駄で歩く足音 ※継続 ペースダウン


『幸せだった。

 だからこそ、それを失ってしまったことをすごく後悔した。

 でももう一度話し掛ける勇気なんて、最初は出なかった。

 ……髪もボサボサのまま、目を腫らすくらい沢山泣いて。

 そんな、鏡に映る哀れな自分を見て初めて……

 私は恋に落ちてたんだって知った』


//バックSE 下駄で歩く足音 ※終了


『……諦めるつもりだった。

 でも縋るようにずっと淡い期待はしてて。

 ……途中からそれがどれだけ間抜けなことなのか思い知って。

 強引にでもきっかけを作ろうとして、ママにさりげなく君のことを聞いた。

 少しずつきっかけを作る確率を上げていって、

 結局、我慢できずに待ち伏せみたいなことをして……』


//SE 周囲を確認するようにその場で足踏みする足音


美桜、聞き手を見つける。


『……夢みたいだ』


//バックSE 美桜、軽く駆け足をする足音 ※開始


『またこんな幸せな日が来るなんて』


//心の声加工 ※終了

//バックSE 美桜、軽く駆け足をする足音 ※終了


「お待たせ!

 ごめんね。待たせちゃったかな?」※フェードアウト


//SE 人々がごった返す喧騒 ※フェードアウト



《続く》

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