永遠仮説

曖惰 真実

H0:我々は永遠を存在する




『全ての精神に共通して与えられたのは、

 自己を永遠であると仮説する愚かな根源的欲求である』




 ある知的生命体は高度な知性を得る。それはしゅとしての生存本能を原動力とし、災害、飢餓きが、争いなどあらゆる困難を乗り越えて獲得したものであった。彼らは膨大な時間を過ごし、その世界にけることわりを求め、その多くを証明した。だがその道中で生まれた問題は解決されること無く、彼らと共に歴史を歩み続けた。


「我らは多くの困難を乗り越え、あらゆる理論を獲得した。そして眼前に残る問題は唯一ただひとつ、『永遠の証明』である。数多の同胞の屍の上に、我らは不老不死とも云える身体を有する。だがしかし、それをもってしても、時が無限に続く事を証明出来なかった。そこで古来より論じられてきた妥協的手法によってこれを証明するべく実験を行う」


 彼らはそこに、『何事も起こり得ない空間』を創造した。叡智の結晶とも表せるそれは、観測する世界と共に時間を経過するが、時間経過以外起こり得ない虚無の空間であった。


「これの永久的観測をもって、ここに何も生まれない限りはこの世界を永遠とする。この妥協案によってしか我々は永遠を証明出来ない」


 この実験において、彼らは永遠を証明出来なかった。その空間に宇宙の発生が観測されたのである。

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