第11話 あとになって知る真実

 俺たちはその後、街を出て魔物が出るという森へと来ている。

 モーリスくんは正直言って、ものすごく飲み込みの早い子だった。

 俺がちょちょっと「魔法はイメージだよ」と説明して、どういう魔法をどういう風に使いたいか、頭の中で考えるんだよと話したらあっという間に理解した。


 この世界の魔法は攻撃魔法しか発達していなかった。誰かが使っている魔法を見よう見まねで扱うというのが基本だ。ただその威力は魔力量に依存する。だから魔力量が多いと有利だってわけ。

 でも魔法って攻撃魔法一つとってもいろんなことができる。弱いものから強いものまで、威力を自分で調整できるんだ。

 

 例えば誰かが魔物に襲われているとしてそれを助けたい場面があったとする。いきなり高威力の攻撃魔法を撃ってしまったら、助けたいと思っている人も巻き込まれるかもしれない。

 だから弱めの攻撃魔法を撃って自分にヘイトを向けさせたり、土魔法で魔物の足を固めて動きを止めたり、植物のツルを伸ばして魔物をがんじがらめにしたり。

 ただ魔物を倒すだけじゃなくて、いろんなパターンで魔法というのは扱える。


 それに俺が作った補助魔法や防御魔法なんかは討伐士として扱えればかなり便利だろう。モーリスくんがシャノンのサポートに回ることでシャノン自身の強さを跳ね上げることもできるし、遠距離からの攻撃で前衛のシャノンのカバーを行うこともできる。


 そういったことを口頭で説明すると、モーリスくんの目はきらきらと輝いて楽しそうに俺の話を聞いてくれた。

 モーリスくんは見よう見まねで魔法を扱うことが苦手だっただけで、魔法の可能性やどうすればいいのか、そのヒントを得ると魔法が苦手だというのが嘘のようにメキメキと実力を表した。


「じゃあシャノンに補助魔法をかけるね」

「おう!」


 今は森で実戦を積んでいる。俺はモーリスくんの後ろから見学だ。


 モーリスくんが探知魔法を展開して魔物の位置を特定。そっちへ向かえば大きな熊型の魔物が二体現れた。

 補助魔法をかけられたシャノンは一体へと突撃。二体目の魔物がシャノンの存在に気が付き攻撃を仕掛けようとするが、モーリスくんの土魔法により二体目の動きを封じていた。

 一体目を簡単に討伐したシャノンは動けなくなっている二体目に攻撃をしかけ、あっという間に討伐は完了。


 よかった、とほっとしたのもつかの間、隠れて様子を伺っていたのだろう狼型の魔物が群れでシャノンへと襲い掛かった。シャノンは補助魔法がかけられているため素早く回避したものの、群れで動いている魔物はすぐにシャノンへと襲い掛かる。

 そこへモーリスくんはシャノンに防御魔法を展開し魔物の攻撃から守った。しかもその後、流れるように森の植物を急成長させて、魔物の半分をあっという間に捕獲。

 数が減ればシャノンも動きやすくなり、バッタバッタと魔物を討伐していった。

 モーリスくんもそれをただ見ていただけじゃなく、拘束していた魔物に向かって火魔法を発射。植物があったおかげで勢いよく燃えてこちらもあっという間に討伐完了。

 その後はすぐさま水魔法を発動させて、森が火事にならないよう配慮までしている。


 すごい。モーリスくん、場を把握する能力にも長けているし判断力も早い。シャノンのサポーターとしてこれ以上にない魔法だった。

 

「モーリス! すごい! めちゃくちゃすごいじゃん! めっちゃ戦いやすかった!」

「本当!? よかった!」


 二人は手を取り合ってきゃっきゃと喜んでいる。微笑ましくて可愛い。


「モーリスくん、本当にすごかったよ! 魔法が苦手なんて嘘みたいだ!」

「えへへ。ソウタさんのおかげです。ソウタさんの魔法講義はとってもわかりやすくて、こんなにいろんなことができるんだと知って魔法が楽しくなりました!」


 魔法講義をする時に、俺は仲良くなるためにモーリスくんと呼ぶことに。モーリスくんにもシャノンのように名前で呼んでほしいと言って、最初は恐縮していたが俺のお願いを聞いてくれた。

 今はすっかり気軽に話せるようになって俺も気が楽になった。


「これでシャノンと一緒に討伐士の仕事ができるな。でも油断は大敵だぞ」

「はい! これからもいっぱい魔法を研究して、シャノンと一緒に頑張ります!」


 自信もついたようだしこれで大丈夫だろう。これからはモーリスくんの強さが徐々に知れ渡っていくだろうし、シャノンと同じSランク討伐士になるのもあっという間かもな。


 ある程度実戦を積んだあとはシャノンの家へと帰ることに。時間はもう夕方になっており、少し雑談をしたあと、モーリスくんにまた会いに来る約束をして城へと戻ることにした。

 乗合馬車に乗って城の近くで降りるとここからは徒歩だ。のんびりシャノンと散歩がてら、綺麗な敷石の上を歩いていく。


「ソウタさん、今日は本当にありがとうございましたっす! あんなに楽しそうなモーリスは久しぶりに見たっすよ!」

「少しでも力になれてよかったよ。それにしてもモーリスくんはいいサポーターだね。これからもシャノンと一緒に頑張ってくれると思うよ」


 本当にモーリスくんは見事の一言だった。きっと、元々魔法の素養は高かったはずだ。上手く理解できていなかっただけで、コツを掴んでしまえばあっという間に強くなった。

 シャノンと長年一緒に討伐士として働いていたから戦闘慣れもしていたし、場の把握もちゃんとできていた。これからもっともっと強くなる予感しかしない。


「でも正直言うと、シャノンの恋人が男性だと知って驚いたんだ」

「え? そうだったんすか?」

「うん。実は俺のいた世界って同性同士の恋愛って少数派でね。偏見もあったりして結構珍しいことでもあるんだよ」


 ここ最近じゃ割と普通になりつつあるものの、まだまだ偏見の目は強い。そこでこの世界では同性同士というのはどんな扱いになっているのかシャノンに聞いてみると、なんとごくごく普通で当たり前のことだそうだ。

 子どもが産めるのは女性だけというのは俺のいた世界と変わらないものの、恋愛対象はどっちでもいいというのが普通らしい。

 同性同士で結婚する人も多いとのこと。ただ、跡継ぎが必要な場合は異性と結婚するんだそうだ。


「なんかソウタさんの世界って損してるっすよね? 人を好きになるのに性別って関係あるんすか?」

「え?」

「同性の恋人なんておかしい、って俺にはよくわからないっす。だって俺は男だから好きになったんじゃなくて、モーリスだったから好きになったんすもん」


 シャノンの言葉を聞いて目が覚める思いだった。固定観念を覆されたというか、考えを改めさせられたというか。

 人を好きになるのに性別は関係ない。その言葉の意味が重くて胸に深く突き刺さった。

 俺は今まで好きになったのは女性ばっかりだった。とはいっても好きになったこと自体数えるほどしかないのだけど。


 もしかしたらあっちの世界にいたから女性を好きになったのかもしれない。育った環境で価値観ってある程度確立されていくような気がするから。

 だからこの世界の人たちは同性同士の恋愛に違和感を持たないのかも。


「もしかしてフェリクス様のことで悩んでるんすか?」

「え!? え!? なんで!?」

「え? 何そんなに驚いてんすか? フェリクス様がソウタさんのこと好きなの、周知の事実っすよ?」

「え゛!?」


 なに!? そんなに広まってんの!? 嘘だろ!?


「それに俺とダグラス様、最初にフェリクス様に言われたんすよ。『ソウタに懸想することは許さない』って」

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

「めっちゃ牽制されてるなーって思ったし、旅の中でもフェリクス様がソウタさんを好きなこと全然隠してなかったっすもんね」


 宿に泊まった時も俺とフェリクスが同室だったのはみんなの中で決定事項だったらしい。ダグラスもシャノンもフェリクスを応援していたらしく、俺たちを二人きりにする機会を増やそうと相談していたそうだ。

 いや確かに旅の道中、フェリクスと行動を共にすることが多かった気はしたけどまさかそんなことになっていたとは……


「俺、フェリクス様とソウタさんがくっついてくれたらなーって思ってるんすよ。フェリクス様って格好いいだけじゃなくて、俺みたいな平民相手でも優しくしてくれたし邪険にすることもなかったっす。ソウタさんを本当に大切にしてるっていうか、そんなところも格好いいって思ってたんで、俺の憧れの人でもあるんす」

「シャノン……」

「フェリクス様の気持ちを受け入れるかどうかは最終的にはソウタさんが決めることっすけど、俺はお似合いだと思ってるっすよ!」


 無邪気に笑うシャノンの笑顔が眩しいと思った。

 ――俺は、フェリクスの気持ちを受け入れることができるんだろうか。あの時のことを乗り越えられるんだろうか。

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