死が2人を別かつまで

ノビシロの伸びの部分

初日 馴れ初め

一目惚れという言葉は知っていたが、こんなにも衝撃的な感情だとは思わなかった。


小学5年生の頃、まだ蜃気楼が地面を揺らす9月頃に俺は俊(しゅん)に出会った。


俊は親の仕事の都合で俺の住む家の近所に引っ越してきた様だった。俺の家から徒歩で約30秒という近さの為、挨拶をしにきたのだ。


俺より背が低く、まん丸な眼鏡をかけたぱっつん前髪の彼を見た時、心臓が自分でも分かるほどに跳ねた。子供ながらに理解できた。


これは、初恋だ。姉ちゃんの部屋で読んだ漫画で見た恋だ。


相手は男の子だが、この時の俺はそんな事気にもしなかった。いや、そんな考えにも至らない程に魅入ってしまったんだと今になって思うのである。


そんな彼からの「はじめまして。」の一言に自分の意思とは関係なく更に心臓は加速した。


子供ながらに悟られまいと平静を装い挨拶をした。正直、出来ていたかどうかは憶えてはいない。


暑さを言い訳に顔の赤さを誤魔化した事だけは鮮明に覚えている。


そんな初対面だった。

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