第27話 探偵の再起

放課後の図書室。

彼は、驚きと混乱で、しばらく言葉を失っていた。

「嘘だろ…? じゃあ、聡子さんの自白は、全部デタラメだったってことか?」

「ええ。そして、私たちは、真犯人の掌の上で踊らされていただけだったのよ」

悔しさに、私は唇を強く噛んだ。

一度は解決したと思った事件。

その裏で、真犯人は高笑いをしていたに違いない。

私たちの未熟な推理を、あざ笑っていたはずだ。

「なんてこった…。」

「高田…宗介…。」

「可能性は極めて高いわ。でも、今のままじゃ、何も証明できない。聡子さんは自白を維持するだろうし、警察はもう、再捜査なんてしてくれない」

事件は、公式には終わってしまっている。

ここから全てをひっくり返すには、動かぬ証拠が必要だ。

高田が、どうやって山崎辰五郎に心臓発作を起こさせたのか。

その具体的なトリックを解き明かさない限り、私たちに勝ち目はない。

航汰は、悔しそうに机を拳で叩いた。

「クソッ! このままじゃ、聡子さんが可哀想すぎるぜ! 何もしてないのに、殺人の罪を被せられて…」

「ええ、そうよ」

私は、航汰の目をまっすぐに見つめた。

「だから、終わらせない。終わらせるわけにはいかないのよ」

私の心の中の、一度は消えかけた探偵としての炎が、再び強く燃え上がるのを感じた。

失敗は、許されない。

だが、ここで諦めるわけにはいかない。

「航汰、もう一度、力を貸してくれる?」

私の問いに、航汰は迷わず頷いた。

「当たり前だろ! 俺たちのせいで事件がややこしくなったんなら、俺たちがケリをつけるしかねえ!」

その言葉が、心強かった。

私は、机の上に広げられていた、一度は解決済みとして閉じられた事件ファイル(のコピー)を、もう一度開いた。

「物語は、まだ終わっていなかった。いえ、本当の物語は、ここから始まるのよ」

私は、手元に置いていたミステリー小説を、そっと開いた。

それは、まだ誰も読んだことのない、最終章の始まりだった。

偽りの終着駅にたどり着いた探偵は、今、真実行きの列車に乗るため、再び立ち上がったのだ。

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