第22話 科学部
俺の仕事は午前中に外でビラ配りと声掛けをするだけの簡単なものだった。仮装や列の管理などの重要なものは他の人がやってくれるらしい。
「なあ、俺遊んできていいか!?」
涼もついてきているが先ほどからそわそわしている。
「俺は1人でいいから好きなとこいってこいよ。金あるか?」
「んっとね……」
ガムテープつきの青色の財布をぺりぺりとはがして中を確認している。
「……153円しかない。というか俺じゃ買えない。」
「あ、そっか。午後なんか買ってやるからそれまで出し物でも見てきたらどうだ?…………2年B組お化け屋敷やってまーす。」
保護者が大勢来ているため真面目なフリをしないといけないのが辛い。
「よし!行ってくる!1時に戻ってくる〜〜!」
「人にぶつかるなよー。」
駆け足でどこか行ってしまった。行きたいところでもあったのだろうか……。今が11時だからあと2時間か……。
ビラ配りはその仕事の性質上人をばらけて配置する必要があるため友達とダベることもべきない。喋り相手はもともといないが。
太陽が昇り、影の位置が変わるたび、少しずつ移動しながらひたすらビラを配り続けた。途中母さんが来て写真を撮られた。典子とルイは2人で学校を見て回っているようだった。
「内貴君、交代の時間。」
「あ、はい。」
喋ったこともないクラスメイトにバトンタッチしてあとはフリータイムとなった。
「待たせたか!?」
「いや、いま終わったところ。」
「陽とも待ち合わせしてんだろ?早くいこうぜ!」
「まあそんな慌てるなよ。……やけに上機嫌だな。」
「いやー眼福眼福、コスプレ大会ってのがあ」
「は…………なにーーー!?お前そういうことは早く教えてくれよ!!サボってでも行ったのに!!午後の部は!?」
「知らん。午前が女子で午後が男子だったと……おも、う。」
「はぁーー!!ふっざけんじゃねぇよ!男のコスプレになんの需要があるんだよ、、」
肩を落としながらも食堂まで向かった。
「憧也、遅えぞ。」
「すまんな……げっなんで典子が?」
「お世話になります。くしゅんっ!……くしゅん!」
「ルイに任されたんだよ、これから憧也とまわるって言ったらちょうどいいって。」
「典子風邪か?大丈夫か?まあ色々と回ってみようぜ。」
「私、焼きそば買いたい!」
遠慮しろとは言わんが、遠慮しろよ。
「俺も行きたい!!」
「お前もかよ、仕方ねぇな。」
「「お前も?」」
あ……こいつら見えてないのか。
「いや……まあ、いこうぜ!」
「焼きそば600円……高ぇ……」
「なんだ憧也金足りないのか?」
「私は財布持ってきてるから自分で出せるよ。憧也君差し入れのせいでお金たりてないんでしょ?出そうか?」
女性に奢らせるわけにはいかない。
「いや大丈夫だ。あとお腹空いてるから2つ頼もっかな。」
4つの焼きそばを注文し、食堂の椅子に座って食べることにした。お昼時ということもあって大混雑だ。涼にこそっと焼きそばを渡し隠れて食わせている。
「そういえば憧也と上藤さんって面識あったのか意外だな。」
「憧也君が昨日お見舞いに来てくれたんだ。」
「まあ、いつも顔合わせるクラスメイトだしな。」
涼ががうめぇ、うめぇと焼きそばに食らいついている。
プルルルルル、プルルルルル、
「あっ、母さんから電話だ。もしもし……ええ〜〜……うん、、わかった、それじゃあ。」
「なんて?」
「そろそろ病院に戻る時間だって。……くしゅん!」
それからしばらくして典子母が典子を引き取りにきた。
「さて俺らはどこ行くかな……と言いたいところだが、涼って何者なんだ?」
「……だよな気づかないわけないよな。」
「当たり前だろ昨日明らかに人じゃないやつからの攻撃をくらったんだから」
「なるほど……涼ってのが例の神か……グレイスの野郎から神を探せって言われてたから嘘ではないんだろうな。ここにいるのか?」
「ああ、さっきからバクバク焼きそば食ってるよ。」
「ん?俺の話か?」
頬をパンパンにしてこっちを見てきている。口周りはソースでべちゃべちゃになっている。
「何も見えないし聞こえないってのが少々残念だな。」
「まあ、いづれ見せてやるさ。」
「そうだな、おいおい見せてくれ。……にしても人が多いな。他に席待ってる人もいるっぽいし早くどこか行こうぜ。」
「あ、トウヤどうでもいいかもしれないけど、さっきあの女お前のこと盗撮してたぞ。くしゃみに紛らわせてカシャって。」
「…………は?」
怖すぎんだろ。よくナチュラルに盗撮できるなあいつ。
それから俺たちは文化祭を楽しむのは二の次で陽との会話を楽しんでいた。
その結果俺たちは人がいない方いない方を選んであるき続け一つの部室に到着したのであった。
「なんだかとんでもないところまできたな……」
「確かここ昔の使われなくなった寮だっけ。」
「今は科学部が先生に頼みこんで部室として使ってるらしい。」
「こんな廃墟みたいな所をよく部室にしようと思ったよな。」
「新入部員か!!」
「「「は?」」」
「いやーようこそ、ようこそ我が研究室へ!!ささ早くここにサインを。」
なんだこのロリっ娘は。身長が涼と同じくらいじゃないか。
「「違います」」
「え?…………もしかして文化祭の活動発表を見にきた人か!?それならそうとはやく言ってくれたまえよ。ともかく、ささ、早く我がラボへ。」
(憧也、あいつヤバいぞ。)
(同感だ。隙を見て帰ろう)
俺たちは踵を返して歩き始めた。
「ちょ、ちょい!!待ちたまえよ!!君たち、その組章、後輩だろ!!先輩の言うことが聞けないのか!!」
「「せんぱい?」」
「吾輩は高校3年生きっての秀才、時雨理沙!!」
「「はあ?」」
「なんなのさ、その嘘つきをみるような目つきは!!こう見えても我はすごい権限をもってるのだぞ!!そ、その気になれば退学にだってできちゃうんだから……」
「あんた、顔真っ赤だぞ。嘘ついてるってすぐわかる。一人称も我とか吾輩とか言ってるし……」
「っっっ!!」
「じゃあ俺たちは帰るから、帰ろうぜ憧也。」
「おう。」
「おーーーい!!頼む、少しでいいから見ていってくれ!!このままだと廃部になってしまう!!頼む、可愛い後輩達!」
「憧也どうする?」
「うーん、暇だし少しくらい見てやるか。」
「まあ、いっか。どうせ暇だし」
「本当か!?恩にきるよ!それと是非ともここの部活はすごかったと広めておいてくれ!!」
「……トウヤ、俺眠くなってきた肩車してくれ。」
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