第7話 サービス♪ サービス♪

 全身にクリーンをかけてサッパリしたけれど、頭に巻いていた和柄の日本手ぬぐいはどうかなと外して見てみると、汗ジミもなくキレイだがシワがあるな。



 試しに『シワが取れて新品同様にキレイになぁ〜れ』と思いながら「クリーン」と言うと、手ぬぐいはシワが無くなり新品みたいにサクラ柄のピンク色が鮮やかになった。


 広げて見ていると、サヤチィが「キレイ! ちょーだい!」と言ったけど、さっきから王妃様の視線がオレの手元に突き刺さってるんだよね。


「ごめん、これはあそこにいる王妃様から『献上せよ』って言われているからダメなんだ」


 サヤチィたちが王妃様を振り返って見ると、そばにいる従者に何やら言っている。


「そうかぁ……、王妃様の先約があるならダメかぁ」


「でも、キミたちならもっといいデザインのものが作れるんじゃないか?」


「錬金術で?」とマイカたんが訊いた。


「それでもいいけど、デザイン画を書いて誰かに作ってもらえばいいんじゃないかな」


「あー、それでもいいか」とサヤチィは納得してくれた。


 空になったペットボトルを受け取ってキャップをはめてジムバッグにしまった。


 異世界のものをそこら辺に捨てるのは良くないんじゃないかね。


 従者がオレに静かに近づいてきた。バトル領域は広げたままだから従者のスキルはわかった。


 コイツ、強い! 


 身体強化・斥候・隠密・暗殺・短剣術……、ヤバいスキル持ちだな。


 いわゆる『暗部』とか『スパイ』に『暗殺者』ってことだな。


「王妃殿下がその布をご所望だ」


「どうぞ」と言って軽く四つ折りにして従者に渡した。


 従者はオレをジッと見て去っていった。


 鑑定されたかな? 


 オレも従者のスキルを知ったから、お互い様か。


「持ってかれちゃったね」


「まぁしかたないさ、王妃様だからな」


 従者から手ぬぐいを受け取った王妃様は嬉しそうに広げて見ている。


 そばにいる王女たちもうらやましそうに見ていたが、オレをジーッと見て、さっきの従者を呼んで何か言っている。


 従者がまた静かに近づいてきて言った。


「マリリン王女殿下とイングリッド王女殿下が、あの布はもう無いのか? とおたずねだ」


 えーっ! なんだよ欲しがり屋さんたちだなぁ。


 う〜ん、日本手ぬぐいはカラフルな柄を見つけると買っているし、中古品の家具とか売っている店に山積みになっていた古手ぬぐいで、柄のキレイなやつとか、筆使いが見事な漢字の書いてあるやつも漂白してジムバッグの中に何枚か入れてあるけれど、アレクレ、コレクレって言われてそのたびに渡していたらダメだよな。


「今後スキルを使うのに必要なので渡せませんが、この女性たちならこの世界に無いデザインや色使いのものをご提案できると思いますので、誰かに作らせてはいかがですか?」


 従者は不満そうな顔をしたが、少し考えて「王妃殿下と王女殿下にご提案してみる」と言って去っていった。


「なんか押しつけられちゃったんですけどぉ〜」とマイカたんが言った。


「でも、オジサンよりはキミたちのほうが、流行りのデザインとか色使いをよく知ってるだろう? それにあの王女様たちはキミたちと同じくらいの年頃だから、この世界に無いものの話をしていけば友だちになれるんじゃないかな。王女様たちと仲良くなっておけば、何かいいことがあるかもしれないよ」


 3人はそっかぁ、それはアリねとうなずいた。


「なんだぁ、サヤチィたちはオッサン好きだったっけ?」


 近づいて来た剣聖スキル持ちのサトルが怒った顔で言った。


 おっ! 剣聖・光魔法スキルに魔力は最上級か、だが体力は初級だな。


 まだ中学生だから身体が出来上がっていないのか? 


 オレは体力は神級だが、魔力は初級だった。


 なんかバランスが良くないな。


 スキルの影響なのかな? 


「オッサン、俺たちにもポ◎リかコー◎をくれよ」と盾聖スキル持ちのユウジが言った。


「いやぁ、もう出せないんだよね。だから錬金術で創ったら? と言っていたんだ」


「ホントか?」と盾聖はマイカたんに訊いた。


「うん、鑑定したら創れそう」


「じゃあ、くれよ」


「材料を集めないと創れないから、今はムリ」


 ちぇ〜と剣聖は残念そうだ。


 チラリと王様を見ると、白髪のオールバックオッサンや着飾ったオヤジたちと難しい顔をして話し合っている。


 デモンスが近づいてきて言った。


「ポーションありがとう。もうすっかり回復できたぞ」と空のペットボトルを2本渡してきた。


「見たことが無い入れ物だが、返すよ」


 ポケットに入れていたキャップをはめてジムバッグにしまった。


「クルニー団長もすっかり回復できたそうだ」


 クルニー団長を見ると軽く頷いた。


 オレも頷き返した。


 対決が終わればその結果を素直に受け止めるか……、クルニー団長、やっぱりアンタはおとこだよ。


 どうやら王様たちの話し合いが終わったようだ。召喚された中学生とオレは別々の従者に案内されてホールを出ることになった。


「じゃあ、もしかしたらもう会えないかもしれないが、みんな元気でな」


 いきなり、リサちゃんが走ってきてオレをハグしてくれた。


「また、会おうね」とニッコリ笑うと、従者に連れられてホールを出ていった。


 う〜ん、やっぱりリサちゃんのお胸様は素晴らしい! 


 思わぬサービスタイムに、オレは『我が人生に悔いなし!』と心の中で高く手を上げた。


 念の為にバトル領域は解除しないで身体の周囲50㌢程度に縮めて従者に案内されてホールを出た。


 バトル領域を維持しておけば『直接の攻撃はしない』という条件はそのままだから、いきなり襲いかかってこられても大丈夫だろうからね。


 さて、これからどういう展開が待っているのかな。


 怖いけど、楽しみでもあるな。


 

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