第5話 無敵の秘密

 まずは立ち止まったままで、両腕を頭の上に大きく上げて、両手を打ち合わせることで身体をほぐしていきますか。


 オレは金属鎧を着た状態で近衛騎士たちがどのくらい身体を動かせるか確かめてから攻めるつもりだ。


 そのまま、ゆっくりと大きく足を開き、左にぐーっと膝を曲げてみた。


 対決する騎士たちとは正対している。


 オレの動きを見たまま真似て右膝を曲げている騎士もいるし、左右が逆になるのを理解して左膝を曲げている騎士もいるから、3人の騎士はバラバラな動きになるが身体を動かしているからルール違反ではない。


 左膝を伸ばして右膝をぐーっと曲げてから、軽くその場でジョギング。


 腰から膝上まで金属鎧で包んでいるし、膝関節もガッチリとカバーされている。


 膝下から足首までも金属鎧で包んでいるし、ブーツの上に金属のカバーをつけて守っている。


 上半身はガッチリと金属鎧でカバーされているから、腰を曲げたりひねったりは無理そうだな。


 さて、バトルモードで騎士たちを分析していくか。


 バトルモード開始を宣言したら目の前に表示された透明なウィンドウの分析・吸収・領域拡張を使ってみるか。


 頭の中で考えるだけで、項目を選択できるな。


 指でウィンドウをタッチしても選択できるようだが、あまり変な動きはしないほうがよさそうだ。


 騎士たちがオレの動きを真似して頻繁に目の前に指を出していたら、何かおかしいと勘づくヤツもいるだろうからね。


 異世界から召喚された中学生なら、他人には見えないスマホかタブレットのようなものを使っていると気がつくだろう。


 中学生たちが授かったスキルでも同じように透明なウィンドウが表示されるのかもしれないがね。


 中学生全員がオレの味方なのかどうかはわからないから、警戒はしておいたほうがいいな。


 分析を選択すると、騎士たちそれぞれの能力が見れる。


 体力・魔力・スキルのうち、体力を分析すると、レイノルスとデモンスは中級でクルニー団長は上級だな。


 細かい数値で表示もできるが、今はざっくりわかればいいや。


 オレ? オレは神級だよ。


 だってバトル支配者マスターなんだもの。


 魔力を分析すると、デモンスは中級、レイノルスは上級、クルニー団長は最上級か、凄いね。


 オレ自身の魔力は初級だ。


 だって、この世界に来てから、まだ1時間程度だよ、いきなり最上級だとか神級の魔力があったらおかしくないか? 


 たしか女の子は神級魔道士と神級錬金術師だったな。


 彼女たちはスキルの効果で魔力が神級レベルなのかもしれないね。


 まぁ、他人ひとのことは気にしないでおこう。


 ただ、バトル支配者マスターのオレにはそんなことは関係無い。だって、対決している騎士たちの魔力を吸収できるんだから。


 騎士たちのスキルには、剣とか盾に統率や斥候があるが、3人に共通して身体強化があるな。


 つまり、魔力を使った身体強化で重たい金属鎧を着ていても、動けるということだ。


 じゃあ、その魔力を吸収したらどうなる? 


 それを試してみよう。

 

 魔力吸収を選択して、その魔力の振り分け先を吸収にしてみた。


 すると、みぞおちの奥が熱くなって少し痛くなってきた。


 吸収からストックに振り分け先を変えると、痛みはなくなった。


 ストックのゲージが少しずつ増えていく。


 3人の騎士から順調に魔力を吸収できているようだ。


 心なしか、3人の息が荒くなってきた。


 まだ遊ぼうよ。


 その場でのジョギングからホールの中を軽く走ることにした。


 バトルモードに入ってから、ノリノリの音楽が流れているが騎士たちを引き連れてジョギングしていると、金属鎧がガチャガチャ鳴ってうるさい。


 頭の上で手を打つのは継続してるから、そろそろ肩や肘が鎧にこすれて痛くなってきたかな?  

 


 騎士たちの顔がゆがんできた。


 だから、脱いだらどう? と言ったのに……。


 ジョギングしていると、ヘルメットについているシールドが落ちてきて、足元がよく見えなくてコケそうになっている。


 だからといってジョギングを止める気は無い。


 対決だからね、遠慮はしませんよ。


 ホール内を5周してから、元の位置に戻り、その場でジャンプ! ジャンプ! ジャンプ! 


 10回ジャンプして、スクワット! 


 スクワットから大きくジャンプ! 


 もう一度スクワットしてから大きくジャンプ! 


 この動きを頭の上で手を打ちながら10回繰り返したら、デモンスが後ろに倒れてゼエゼエと荒い息を吐いて動かない。


「デモンス! 警告1回目!」


 オレはデモンスを指さして大きな声で言った。


「10数えるうちに起き上がって動かないと、負けだ!」


「い〜ち、に〜い、さぁ〜ん……」と数えていくと、デモンスはヨロヨロと立ち上がった。


 もちろん、その間もジャンプしてスクワットは止めていない。


「立ち上がっても、動かなければ警告だぞ! 動け!」


 デモンスはゆっくりスクワットしてジャンプしたが、今度はレイノルスがスクワットしてから倒れ込んだ。


 立ち上がるのを待ったが、動かない。


「レイノルス! 警告1回目!」


「い〜ち、に〜い、さぁ〜ん……」と数えていっても、動かない。


 どうやら気絶しているようだ。


「じゅ〜〜〜うぅ、レイノルスの負け!」


 おまけしてゆっくり数えたが、気絶しているんじゃ続行は無理だね。


 オレは軽いジョギングに切り替えてから、右手を上げて人差し指を立てて言った。


「レイノルス! 倒したぞ!」


 クルニー団長は苦々しい顔をしているが、バトルモードで魔力を吸収されている状態で身体強化を使い続けて身体を激しく動かしていたら、気絶するのはしかたないだろう、それにヘルメットのシールドが下りたままなら、酸欠状態になってもおかしくないよ。


 その場での軽いジョギングからホール内のジョギングに切り替えようとしたら、デモンスが倒れた。


「デモンス! 警告2回目!」


「い〜ち、に〜い、さぁ〜ん……じゅ〜〜〜うぅ〜〜〜」


 かなりおまけしてゆっくり数えたが、立ち上がってこない。


「デモンス! 倒したぞ!」


 「クルニー団長とサシで勝負だ!」


 ホール内をジョギングしながら大声で言った。


 ホール内を10周すると、クルニー団長から魔力を吸収しなくなった。


 もう魔力が枯渇したのかな。


 汗びっしょりだが、顔色は真っ青だ。


 ここは手を抜かずに攻める! 


 ジャンプして頭の上で手を打ってからスクワット! 


 スクワットから腕立て伏せの姿勢になってからジャンプ! 


 また頭の上で手を打ってからスクワットして腕立て伏せの姿勢になってからジャンプ! 


 必死になってフラフラしながらクルニー団長はオレについてきた。


 だが10回目のスクワットしてから腕立て伏せの姿勢で、そのまま床に倒れ込んだ。


 そして、警告を宣言してからゆっくり10回手を叩いて待ったが立ち上がらなかった。


 クルニー団長、アンタはおとこだよ! 


 本当によく頑張った! 


 だが、これは対決だからな。オレは授かったエアロビスキルを最大限に活用して3人の騎士を倒した。


 魔力を吸収して身体強化を使えないようにするなんて、やり方が卑怯だ! と言いたいヤツは言えばいい。


 オレは、このエアロビマスターでこの世界を生き抜いていくしかないんだ。


 両手を高く上げてその場でジョギングしながら大きな声で言った。


「最後まで身体を動かしていたのは誰だぁ〜? オレだぁ〜〜!」


「この対決はオレの勝ちだぁ〜〜〜!」


 その時、壁際に立っていた騎士たちが剣や槍をオレに向けてせまってきた。




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