第3話 おっさんをナメんなよ
「もう一度言うぞ! 私をこのまま追放したら、女神様の神罰が下り、この国は滅亡するかもしれんのだぞ!」
「なっ……、なにを言っておるのだ。神罰が下るはずなど無い!」
オールバックのおっさんが、ちょっと震える声で言った。
「どうして、女神様からの神罰が下るのだ。エアロビマスターとやら、説明してみよ。それによってはこの場で首をはねるぞ!」
国王が言った。
「それこそ神罰が下る!」
「だから、説明せよと申しておる」
国王はイラついた声で言った。
「先ほど、その水晶玉で女神様から授かったスキルを調べたな。そして剣聖や盾聖に神聖魔法などを授けられているのがわかったはずだ。この場にいる者たちはみんな喜んでいた」
「女神様は、この国が、いやこの世界が平和になるようにスキルを授けられた。では、私のスキルだけが、この国の、この世界の平和に役立たない使いものにならないスキルなのだろうか?」
「この場にいる異世界人以外はエアロビクスも知らないし、ましてやエアロビマスターがどういうスキルか知らない」
「知らないもの、知らないスキルだから追放するということは、スキルを授けられた女神様に対する不敬だ!」
「女神様が授けられたスキルが役に立たないものと決めつけることは女神様に失礼だとは思わないのか?」
「神ならぬ、人の分際で、神のなされることを役立たずと決めつけることは不敬であり、神罰を下されてこの国が滅びても文句は言えない」
「では、お前にはエアロビマスターがどういうスキルかわかるし、この国やこの世界に役立つスキルだと言うのだな」
「私が授かったスキルについてわかるのは当然だ! キミ、剣聖のキミ。剣聖スキルについてキミはわかるか?」
「当たり前だ。わかるさ」
「キミは? 神聖魔法のスキルについてわかるか?」
「わかるわよ!」
「盾聖のキミも、魔道士のキミも、錬金術師のキミも、わかるよな」
「「「わかる(わ)!」」」
「どうですか、みんな自分のスキルについてわかるものなのです」
「では、そのエアロビマスターがどういうスキルなのか、役に立つものか証明してみせろ」
国王はオレを
「わかりました。私のスキルを使って騎士様と対決します!」
ホールにいる者たちはざわついた。
スキルを使って騎士と対決する? この異世界人は死にたいのか? そんなつぶやきが聞こえてきた。
「ただし、このスキルは剣聖のような直接の攻撃スキルではありません。私の出す条件で戦っていただきます」
「その条件を言ってみろ」
「まず、直接の攻撃はお互いにしません。騎士様は私と同じ動きをしていただきます」
「騎士様と私のどちらかが動きを止めた時、あるいは座り込んだ時が、対決に負けたということになります」
「騎士様たちには3回猶予を与えます」
「つまり、動きを止めた時に警告します。その警告は3回までにします。4回目の警告は負けです」
「3名の騎士様と同時に対決して、最後まで動きを止めなかった者が勝者です」
「この条件で対決します」
「それで、お前が負けたらどうするのだ?」
「即座にこの国から追放されてかまいません」
「では、仮に勝ったらどうするのだ?」
「そうですねぇ……、時間をいただきます」
「時間?」
「はい、この場で私が勝っても、それは私が騎士様たちよりも強かった、ということにしかなりません。私のスキルがこの国やこの世界に役に立つものと証明するためには、この世界に生まれ育った者を指導して、結果を出さなければなりません。そのためには時間がかかります」
「ふうむ、それはそうだな。ではお前が勝てば30日やろう。それでこの世界に生まれ育った者にエアロビとやらを教え込むのだ」
「その条件でよろしいです」
勝っても負けてもオレ自身にはあまり得るものは無さそうだが、オレは勝ちを確信している。
なぜならオレはエアロビマスターなのだ。
エアロビクスで勝負するなら負けるわけが無い。
実は、中学生たちが水晶玉でスキルを確認している最中に、なぜだかオレはエアロビマスターについて、何ができるかチェックできたのだ。
あの女神のミスなのかもしれないが、エアロビマスターにはモードがあって、ノーマルモード・トレーニングモード、そしてバトルモードがあるのだ。
そのバトルモードに入れば、エアロビクスではオレはこの世界では無敵だ。
あとはそれを証明するだけだ。
お楽しみの時間はこれからだぜ。
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