まぜると!?

シュウ・タイラー

#1 Emergency

あぁ…また…この感じ。

スタジオの空気、張り詰めて重い。


いつもは譲り合ってるのに、時間的に3曲となった途端、未来ミラ一茶イッサ、どっちが2曲って口論になって…


お世話になってるライブハウス「apricotアプリコット」主催のオムニバスライブ「session jamセッション ジャム


お呼びがかかったのはいいけど、二人の険悪さに、歌うのワタシ!って口出しできる雰囲気じゃなくなってる…


「お二人さん、ナミ嬢が困ってる。ジャンケンで、ってわけにはいかんかね?」


琳珸リンゴさんナイス!

ドラムのキレで、二人のリズム揃えちゃって!


「最近、ブルージーな曲がウケてるし、お客さんも期待してるんじゃない?」


ベース・作詞作曲の霞間カスマ 未来ミラ

半音階を多用した儚げなメロディが心をつかむ。

最近、未来ミラの楽曲比率が高いのは紛れもない事実。


「今回客層若めだし、初期のポップ寄りの楽曲、久々にれば、初期からのお客さんも納得すると思う。」


ギター・作詞作曲のトブヒ 一茶イッサ

最近未来ミラの曲多いから、一茶イッサの曲聴きたいファンもいるはず。


ワタシも、今回は一茶イッサのポップな曲が良いと感じる。


書いたのは二人、でも歌うのはワタシ…

だけど、何も言えない…


こんなんじゃ、エミ様への想い、また遠ざかってく…


Mazeltマゼルト」のベース、エミ様


数ヶ月前、初めて観たMazeltマゼルトのライブ。

クールな表情と、うねる様なベースライン。

時に客席に投げかける挑発的な視線。


気絶するほど悩ましくって、一目惚れ。


それからというもの、エミ様のSNS、私服他あらゆることチェックしてる。


ボンデージ系のクールスタイル。

はたまた、たまに見せるゆるいTシャツ姿。


はぁ…すべてが尊い…。


これまで幾つものバンドを失ってきたワタシ。

ゆるふわ系と言われるけど、中身肉食系のワタシ。

そのせいか、いつだって恋が実らないワタシ。


でも、今度こそ間違えない。

エミ様、絶対に振り向かせてみせる。


そのためにも、今度の「session jamセッション ジャム

同じステージに上がれるから、絶対に外したくない…


「初期の曲、ちょっと荒削りなとこあるしな…」


未来ミラ、それは聞き捨てならない。調子乗りすぎ。」


あー、未来ミラ、時々言い過ぎちゃうの悪いとこ…

一茶イッサ、いつになく怒ってる…


琳珸リンゴさん、なんとかして…


「ジャンケンにしとこか…。」


このポンコツ!一茶イッサのフォローぐらい入れなさいよ!

真実マミさんいないと、琳珸リンゴさん…本当使えないわ…。


……って、一茶イッサ、ここでジャンケン負けちゃうの!?


曲の比率と一緒に、ライブ後の波乱も決まったような気がした。



◇◇◇



「・・・で、琳珸リンゴさん。なんでワタシらだけになっちゃったんですか?」


未来ミラの曲が思いのほかウケなくて、一茶イッサの曲がウケたからかな…」


で、なんで二人とも脱退って話になるの?自分勝手過ぎない?


エミ様と同じステージに立つことできなくなるじゃない!


「お互いに、実力は認めてるだけに、バツが悪かったんだろうね…」


「ドラムとボーカルだけ残っても…一応鍵盤弾けますけど、そういう問題じゃ…」


「・・・ないねぇ。どうするかなぁ。」


ワタシたち danger-0-usデンジャラス 存続の危機到来…


「danger」=「危険」は「0」な「us」=「ワタシたち」って願掛けだったのに…


ワタシのバンド、何故かいつも存続の危機…っていうかバラけちゃうんですけど…


那実ナミちゃん、またもバラけちゃったね…姓名判断しよか?」


お世話になってるライブハウス「apricotアプリコット」の支配人、喜多川キタガワ 真実マミさん。


ドラムの星山ホシヤマ 琳珸リンゴさんの同棲相手でもある。


真実マミさん。今回は琳珸リンゴさんの立ち回りにも問題あったと思うんです!あと、姓名判断は誰にも負けないぐらい運勢良いんです!」


東藤トウドウ 那実ナミ 総格41画、吉ですわ。

他の格も抜け目なく吉。


「この昼行灯に期待しちゃダメ。ドラム以外からっきしなんだから…」


「身も蓋も無い…でも、面目無い…」


「まあ、そのうちなんとかなるでしょ。姓名判断的に。」


真実マミさんも琳珸リンゴさんも…


優しい言葉の一つぐらいかけてくれても良いんじゃない?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る