田舎でのんびり定食ごはん~飯処松原再生記~

箱九十九

第1話出会いと始まり。

僕は松原聡太

両親は交通事故で亡くなった。


いま自宅兼店のしがない食堂で親の後を継いでいるのだが・・・。

元々サラリーマンで帰宅後に親の手伝いをする程度のスキルで昔のお客さんを喜ばせることもかなわず地元で人気店だった店も今では閑古鳥である。


客がこないので、食堂にあるテレビをぼーっと眺めているのが仕事だ。


親の残したレシピなど存在しない。

あるのは古い店と親と仲がよかった仕入れ業者だ。


それ以外僕には何もない。


昼食用にまかないで作った唐揚げを厨房に置きっぱなしだったなと取りに向かうと・・・・。


丈の短いタンクトップにホットパンツなショートボブの女性が銀色の缶片手に僕のまかない。


いや、唐揚げをたべている姿を目撃したのだった!!


「あんたどこから入ってきたんだよ!!」

セクシーな昼飯泥棒に僕は一喝入れた。


僕が大声で怒鳴ったはずなのに彼女は銀色の奴をうまそうに喉を鳴らしながらのみ「プハァー」と歓喜の声を上げては唐揚げにかぶりついていた。


「「ねぇ、あんたの作ったこれまずいんだけど?」


あんなにうまそうに食ってそれかよ昼飯泥!


「う、うるせぇ!唐揚げの味なんてどうでもいいだろ!!」


僕の気にしていることをいう泥棒女に腹が立つ。

エロい恰好しやがって!!犯すぞこら!と叫びそうになるくらい僕の心に刺さる言葉だった。


「ねぇ?私が唐揚げの作り方教えてあげようか?」


にやついたよっぱらい顔でそんなことをいうものだから僕もやはり頭に血が上るわけで


「は?昼飯泥棒が何言ってんだ?今日は見逃してやるから早く帰れよ。」


下心なんてない純粋な怒りだ。

心の平穏をただそれだけを望んだ一言である。


「ふーん、美味しい唐揚げも作れないのにそんなこといっちゃうんだぁー。」


先ほどからクリティカル攻撃を受けている僕だがタダではやられん!


「そんなにいうなら美味しい唐揚げとやらをつくってみろよ!」

相手の挑発に乗ってしまうくらいちょろい僕は術中にはまってしまったことに気が付かない。


僕の言葉を聞いてニヤッとした彼女は勝手に冷蔵庫を漁りはじめる。


「ちょっと、いろいろ足りないものあるから早く買ってきて!」


ふざけんな!美女だしタンクトップから見える果実で誘惑して僕を言う通りにできると思うなよ!!


僕は彼女から渡されたメモを受け取り原付にまたがり近くのスーパーなどへ買い出しに出かけたのだった。


見知らぬ名前も何も知らぬとにかくエロい恰好をした女の言うとおりに買い出しをして戻ってみれば、テーブルにはおおぶりな唐揚げが皿に乗っていた。


「いや、これって!」

材料がないから作れないと言っていたのにどうなってるんだ?と混乱しているが


「いいから、早く食べなよ。冷めたらおいくないぞ」

なんて急かしてきやがる。


箸置きから割り箸を一膳とり、箸を勢いよく割ると湯気がたつ唐揚げを1個つかみ豪快にかぶりついた。


カリッとした触感とジューシーで柔らかくした味のしっかりとついた唐揚げだった。


なんだこれ、僕がつくったのより――。


いや!こんなどこにでもある普通の唐揚げだ!


なんて言いつつも一生懸命唐揚げにかぶりつく僕をにやにや見つめながら銀色のアレを差し出してきた。


「どうよ。私がつくった、唐揚げおいしいでしょ。」


満面の笑みでいうものだから僕は腹が立つものの、銀缶を受け取り


「ああ、うまかったよ!ごちそうさんです!」


と返すので精一杯だった。

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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