第5話: 経団連と真理子の婚約

2003年10月


代々木書房の編集部。


ケンイチはデスクの松永、先輩記者林、同僚の村上紗英と議論を重ねていた。


話題は「アーク族」。


華やかな六本木アーク開業から数か月が経ち、未だ浮かれた記事が世間を埋め尽くす。


しかし、ケンイチは冷静に次の行方を探っていた。


林「ケンイチ、また逆張りかよ。世間が持ち上げてる時にケチをつけると、お前、反発食うぞ」


ケンイチ「先輩、賛美は簡単だけど、警鐘の方が、遅れて評価されるんですよ」


机上には、ユウラク=遊天楽地の動向に関する資料が広げられている。


銀行、証券、保険への参入、そして次に見据えるマスコット的存在(球団)やメディア買収──


ユウラクは、アーク族の中でも異彩を放っていた。


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経団連取材


ケンイチは経団連関係者への取材に足を運ぶ。


既に神谷の顔は、経団連内でも、「若手ベンチャー」ではなく、「次世代を代表する経営者」として浮かび上がりつつあった。


会合の帰り、ケンイチは街灯に照らされた東京タワーを見上げる。


古い象徴の光が、まだ揺るぎなくそこにあった。


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真理子の婚約


社内会議室。午後の光が差す。


真理子は職場の同僚に、勝俣医師との婚約を同僚に報告していた。


アーク内にて、こどもクリニックを運営する勝俣。六本木アークにとっても、都市開発と医療、社会的安心の象徴であり、大切なテナントだった。


拍手と祝福の声。


「速水、本当におめでとう」

「まさに六本木アークの顔!」

「やったぁ、真理子!おめでとう!」


北原や佐久間、相沢が次々に真理子に祝福の言葉をかける。


仲間から、祝福を受ける真理子。


彼女にとって六本木アークは、単なる職場を超え、自らの未来を形作る場所になっていく。


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ケンイチの記事


数日後。


代々木書房の経済誌にケンイチの記事が掲載された。


「アーク族の未来は、熱狂の先にこそ問われる。

六本木アークを灯に、彼らはどこへ航海するのか。


その舵を握る者こそ、次の時代を決定づけるだろう、私は見届けたい。」


記事の締め括りは、読者に未来を問いかける一文だった。

その活字は、六本木アークを舞台に、静かに二人の道を交差させていた。

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