東西爆笑王座争奪戦 副将戦①

「さあ、東西爆笑王座争奪戦は副将戦に移ります。西軍は紅鮭、東軍は陰ノ者です。次鋒戦を勝利した東軍は後攻を選びましたので、西軍が先攻となります」

 舞台袖では紅鮭の二人が鋭い眼光でステージを睨んでいた。

「ここで一気に決めたろうや」

「せやな。それがお相手のためっちゅうもんや」

 紅鮭はたいせいもよしゆきも堂々とした態度で身構えていた。

「それでは、西軍の紅鮭です。お願いします!」

 大会専用の出囃子が再び流れ、紅鮭の二人がステージに向かって行った。



「どうもー、紅鮭と申します」

「よろしくお願いしますー」

「小さい頃って小さなことでもすごく楽しかった覚えがあるなあ」

「せやなー」

「親戚のおっちゃんがお年玉の一万円札を間違えて二枚入れてたとかなあ」

「それはめちゃくちゃデカい喜びや!」

「あとは遠足なんか楽しかったでえ。当日のことばっか考えててよう忘れ物しとったわ」

「それ見たことか! 浮かれて妄想に浸ってるからや!」

「どうやって北緯38度を突破しようかなって」

「どんな妄想や! そこまで来ると遠足ちゃうやん、脱北やん!」

「そんでお菓子は何にしようかよう考えとったわ」

「この流れでえ? 確かにそれ悩むわなあ」

「浮かれた俺は欲しいお菓子を買い忘れたことに後で気づくんや」

「それ見たことか! 欲しいお菓子をリストアップせんからや!」

「しかも、お菓子の量が多かったから先生に目をつけられたわー」

「それ見たことか! 欲張ってあれもこれも買うからや」

「俺はとっさに『この一部は朝ごはんです』って先生に言うたんや」

「そんなん言うたん? そんで、先生何て返してきたん?」

「『嘘つくのは良くないですねー』ってすごい形相で言われたよ」

「それ見たことか! 先生に嘘ついて誤魔化そうとするからや!」

「大人って汚いわあ」

「お前がしようとしたことも十分汚いやろ!」

「そして月日が経ち、今度は資格を持つことにあこがれを持つようになるんや」

「めちゃくちゃ話飛んだやんけ! まあ話は聞くけど」

「志したのはいいけど、この検定の試験範囲ってどこどこだっけってなるんよな」

「まああるあるやな。検定の要項が変わったりしてなー」

「おかんから借りた問題集あかんかなあ?」

「それ見たことか! 最新の問題集をちゃんと買わんからやろ! おかんの問題集は古すぎて出題内容が違うんちゃうの?」

「あ、これ漢字検定の問題集やんけ! って気づいたんや」

「お前何と間違えたんや?」

「QC検定受けようと思うとったんやけど」

「何でそうなるんや!」

「人生のクオリティーを管理できるようになりたいなって思いついてな」

「それ見たことか! そんなしょうもない思いつきだけで行動するからや!」

「俺の思ってた資格と違ったから勉強やめちゃったな」

「それ見たことか! ちゃんと調べんから時間を無駄にしとるやんけ!」

「一緒に受けた友達は合格しとったけどなー」

「だったらそいつにアドバイスしてもらったらええやん!」

「そいつと家が遠かったから遠慮しとったんよなあ」

「じゃあ学校で聞いたらええやん!」

「そいつと仲いいと思われたくなかったんよねえ」

「それ友達って言わんで! それなら何で受けようと思うたんや?」

「しょうがないやん。ビビッっと来たんやからさ」

「それ見たことか! ほんでお前の直感何の役にも立たんやんけ!」

「そんな言うなって、照れるやん」

「へこめよ!」

「こんな奴に申し込みされたQC検定が不憫でならんわ」

「そんな言うなって、照れるやん」

「へこめよ! ああもう率直に言うわ」

「どしたん?」

「何で準備せえへんねんお前は!」

「へ?」

「何かにつけて忘れるばっかしおって! お前の人生に準備というものはないんか!」

「ないでー」

「人に聞いたり、調べてみたりして事前に情報を入手しようってのはないんか?」

「ないでー」

「それ見たことか! そんなんやからお前の人生準備不足が目立ってしょうがないんや!」

「人生出たとこ勝負! かっこええやろ?」

「そんなんただの無謀や! 大抵失敗するんやそんなん!」

「思いで突っ走って大体どっかで失敗するんや」

「それ見たことか! ドン・キホーテみたいなことしとるやんけ」

「何や人を失敗の殿堂みたいに言いおって!」

「それ見たことか! 俺の予想通りお店のドン・キホーテのこと言い出したなあ」

「ああでも殿堂入りってかっこええなあ! これからも準備せずに頑張るわ!」

「そこは流石に準備せえやー! もうやめさせてもらうわー」



 紅鮭がネタを終え、拍手と歓声が起こった。

 紅鮭の二人がクールにステージを後にした。

 堂々とした態度を見せている。

 西軍は先攻後攻が入れ替わったくらいで動揺する様子は見られなかった。

 舞台袖では陰ノ者の二人がステージをじっと見つめていた。

「ここまで来たらやることは一つ」

「ここを勝って彼らにバトンを繋ぐだけ……」

 白井も坂巻も気合は十分だ。

「ありがとうございました。続きまして、陰ノ者のお二人です」

 出囃子が鳴り、陰ノ者の二人がすぐにステージへと向かって行った。

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