事務所ライブ開催③

 舞台袖からマルコス友蔵が姿を現す。

 やはりと言うべきか、その所作からはベテランの余裕が感じられる。

「ありがとうございます。シタミデミタシの二人でした! 続きまして二組目、得意の歌ネタが今日も炸裂する! ラブソングバラードの二人です。どうぞ!」

 そう言ってマルコス友蔵が舞台袖へと帰って行った。

「さあ、行きまひょか」

「そうだな」

 ラブソング糸川もバラード東田も気合は十分だ。

 出番になったので、準備していたラブソングバラードの二人がステージ上へと向かった。



「どーもー、ラブソング糸川と」

「バラード東田で」

「「ラブソングバラードでーす! お願いしまーす!」」

「東田はん」

「どうしたんだ?」

「ディズニー映画の歌ってええなと思いまして」

「お前鏡見てそれ言ってるのか?」

「見た目の話はええんよ。わては特に白雪姫が好きでなあ。ああ、最初に言っとくけど」

「どうしたんだ?」

「アニメ映画準拠で!」

「あれか、予防線かぁ?」

「そそそそそんなことないで、東田はん」

「じゃあ歌のこととか色々と聞かせてくれよ」

「まず白雪姫が願いの叶う井戸に向かって歌うところやね」

「あのシーンの白雪姫はけなげなもんだよな」

「わての願いも叶えてくれへんかなあ?」

「あれは本当に叶えてくれるわけじゃねえと思うぞ」

「その次にこの曲が流れるんですわあ う~た~ あ~いのう~た~ き~み~のために~」

「王子様が白雪姫に出会ったシーンだね」

「初対面でこれいくんか?」

「言うな! 冷めるからやめろよ!」

「なんやかんやがあって、それで継母の女王の手から逃げるために森に行くんですわあ」

「めちゃくちゃはしょってんじゃねーか!」

「ここで白雪姫の歌に魅了された動物たちがやって来てなあ」

「あのシーンはとても可愛らしいよなあ」

「ライオン、ゾウ、サイ、カバ、ガゼル」

「何でサバンナの動物ばっかりいるんだよ! うさぎとかリスとかかわいい動物だったろ!」

「そして小人の家を見つけた白雪姫は、家が汚れていることに気付き、一緒に家に行った動物たちと掃除をするんですわあ」

「そうだったよなあ」

「そう~じのコツは~」

「そうそう、この歌この歌」

「本舗~ 本舗~ 本舗本舗本舗~」

「何でおそうじ本舗が出てくるんだよ!」

「家事って大変やで!」

「知ってらあそんなこと!」

「掃除なんて柴田理恵にさせときゃええねん!」

「意気地なし! どうしてそういう発想になるんだよ! そんで場面が変わって小人たちのシーンね」

「7人のおっさんの歌が流れてくるでえ」

「おっさん言うな! 小人ね小人」

「鉱山で働くブルーカラーのおっさんどもの歌」

「すげえ言いようだな! そうかもしれねえけど」

「ブルーカラーのおっさんなんてみんなけだものですから」

「偏見がひでえ」

「仕事が終わったら終わったで歌うんですわあ」

「来たよめっちゃ有名なやつ」

「肺胞 肺胞 酸素が好き」

「そっちの肺胞じゃねえよ! 理科の授業じゃねえんだからさ」

「この曲、昔と今の吹き替えで歌詞が若干違うんですわあ。昔のやつは『仕事が好き』でして。社畜精神全開な歌詞やなあ」

「まあでも、あの労働環境だからな。あの鉱山、ちょっと掘ればすぐに宝石が手に入る」

「ブルーカラーのくせにホワイトやん! そうそう。宝石で思い出したけど、わてらもお笑いの世界では財宝と呼ばれていまして」

「え、違うよ! めちゃくちゃくすぶってるよ!」

「この後白雪姫に会ったおっさんどもは、体を洗い、寮の食事を食らい、寝る。やっぱブルーカラーのおっさんやんけ!」

「言い方が大変よろしくない! 寮じゃなくて家だし」

「でもこのおっさんども、中々勘が鋭いのか白雪姫に好きな人がいるのに気づくんやねえ」

「ものすごく悪意を感じる説明だな」

「い~つ~かき~っと~ 王~子さ~まが」

「このシーンの白雪姫もけなげなんだよなあ」

「わてらにすんごい番組のオファー持って来てくれ~る」

「来ねえよ! すっげー他力本願だわ、こいつ」

「この後魔女に化けた女王が毒リンゴぶっ放して、小人たちが女王を蹴散らし、王子様のキスで白雪姫が目を覚ますんですわあ」

「めちゃくちゃはしょってんじゃねーか!」

「そして最後に鏡に向かってこう言うんですわあ」

「原作にそんなシーンなかったぞ」

「鏡よ鏡、世界で一番炎上しているディズニー作品主演女優は誰?」

「ぜってーあの人じゃねえか! どうも、ありがとうございました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る