19XX年


 19☓☓年3月17日この日付には、なんの意味もない

その日は週の中でも、私にとって一段好きな時間だった。本を片手に、だらしない服装をした私は近所の公園へ向かう。

いつも通り、この時間帯は、日差しが眩しいので多少影のある、滑り台横のベンチに座った。鉄格子の隙間から覗く陽の光があまりにも心地よかったのを理由に、私は、ゆっくりと頷きながら本のページをめくっていった。


 突然太ももが揺れだした。さっきまで真っ暗だったはずの世界が、急に明るくなる

何の動揺も見せず、いつも通り落ち着いた様子でポケットから携帯電話を取り出す。

着信音がやみ、携帯電話に耳を傾けた次の瞬間、私はまだ夢の中にいるのではないかと錯覚した。

 警察からだった。もともと着信画面を見た時点で嫌な予感はしていた。

その時警察官が話した内容は、ほぼ覚えていない、「殺人、、、」そんな言葉はもともと迫力があるからか覚えている。ただ、私にとって最も印象的だったのは、「愛人の死亡」。

この言葉だ、「愛人」という私にとって最も美しい二文字と「死亡」という私がその人に最も使いたくのなかったこの二文字が出会ってしまったのだ。

どうしてだろう、最も美しいものと、最も醜いものが交わることで、まるで六畳ばかりの部屋に閉じ込められたような感覚になる。

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