フファスナー合流(後編)ァスナー合流(後編)

星野玄明

ファスナー合流(後編(閉じる1話




ファスナー合流

星野玄明




ファスナー合流(後編)


語り 5月1日 土曜日 午後9時過ぎ。

横浜市ホテルハイアットリージェンシー

2階グランドロビー

 エレベーターが開くたびに賑やかな人たちが降りてくる。

音☆ ロビーを通り過ぎて行く人たち の話し声。


永田風音(かざね)ミーコの旦那はどーこだ?」

平井春波子(はなこ)「電話しちゃったらどうよ?」

美紀「うん…そうねぇ…。(小声で)家に帰るまでがクラス会じゃなくてね、いつもの布団でいつものようにすやすや眠るまでがクラス会だからね。」

永田「ミーコの旦那はどーこですか?」り


語り 2人の前に出てロビーを見渡す美紀。

永田「あの人はどう?窓際にいるスーツ着た人。」

「えー…あはは…あんなイケメンじゃないわよ。あははは…あ!あそこにいた!ほら!赤い帽子かぶってる人。」

永田「へえー、インディゴのシャツ、白のハーパン、赤い帽子…フランス好き?虫かごと網を持てば出来上がりか?いやいや、竿とバケツでも良いか?なんだか…自分のことを私なんて呼んだり、のことを君なんて呼んだりするんじゃないの?」

平井「ハハハ…およその旦那で遊ばないの!全然違うよ。似てるところもあるけれど」

美紀「見た目なんてどうでもいいのよ。呼んでくるから、ちょっとここで待ってて。」

音☆ ロビーに流れるピアノ曲 テイラースイフトの楽曲。

語り 通路脇に立つ要にの元向かう美紀。

美紀「や!」

佐々木「よう!」

美紀「素敵な自己紹介ね。もしかしてずっとここで…?」

佐々木「ハハハ…そりゃどうもありがとう。」

美紀「ひょっとして… 2時間ずっとここで待っててくれたの?」

佐々木「うん…まぁね。いいんだ。そんな事は。キミコが困るといけないから。

美紀「ありがとう!流石私のとくさん!ちゃんとみていてくれる!嬉しい!でも、ごめんね。…一言連絡すればよかった。ごめんなさい。」

語り 満面の笑みで要の顔を見つめる美紀。

佐々木「いや…どってことないしさ、人命に問題もない。約束したじゃん。そんなことよりも、キミコ!良い表情してるなぁ!いいことあったんだな!来てよかったじゃん!」

美紀「うん!そうなんよ!ここに誰もいなかったら、すぐにでも抱きつきたい位な気持ち!でも、退屈してなかったの?」

佐々木「ハハハ、俺も嬉しいよ。…ウロウロしたりグレッグと電話してた。

「グレッグさんなんだって?

佐々木「ステファンとハナちゃんが空港まで迎えに来てくれるって。あとでキミコにオハナちゃんの様子を写メしてくれるって。」美紀「わー嬉しい!オハナちゃん大きくなったんだろうまあ…楽しみ。 ねえとくさん、お家に帰る前にみんなに紹介したいから、悪いけれど一緒に来てくれる?」

佐々木「うん。キミコさあ…ほっぺが赤くてりんごちゃん。酔っ払いみたい。ニコニコ顔で可愛いなぁ。」

美紀「ハハハ…アルコール飲むなら家飲みね。」 

語り 要の手を引き、2人の元へ向かう。

音♡ロビーの様子、談笑する声。

平井「ミーコ!バッハよ!あなたが会いたがってたバッハが来てくれたわよ!「

永田「ミーコ!バッハが来てくれたわよ!」

美紀「あー!バッハ、久しぶり!さっき上で見かけたんだけど、忙しそうだったから、声もかけずにごめんね。」

萩尾純一郎「いやー…俺の方こそ悪かったな。あれー?でもなんか昔と雰囲気違うなぁ。」

美紀「三十路に乗ってますます綺麗になっちゃった?いやねぇ…何言ってるのよ、みんな一緒よ!」

永田「ハハハハハ…おいおい、まだそれ言われてないから。」

美希「あはは…あらそう。まだだったの?今からね。準備はオッケーよ。でもバッハますますバッハね。相変わらずかっこいい。

萩尾「おいもう…やめてくれよ。俺、今度大船の駅近くにカレーハウスをオープンさせたんだ。みんな来てくれよ。」

平井「やった!おめでとう!バッハが1番順調ね!」

永田「ファミレスに続いて2軒目か。すごいなぁ。」

美紀「おめでとう。楽しみ。近いうちに行くからね!」

平井「私はバッハに自慢できるような家庭が作れなかったよ。今日ここに来ることも迷った。

萩尾「うん…ちょっと聞いたんだけど… DVだって?辛かったなぁ。」

平井「うん、ありがとう。噂は走るわね。でも来てよかったよ。」

美紀「私も迷ったよ。なんだか身体が壊れ?ちゃって。でも、来てよかった。。この人私の旦那さんね。とくさんよ。よろしくね。」

佐々木「どうも、皆さんこんばんは。よろしくお願いします。」

美紀を除く3人こんばんは。)

美紀「私たち4人はね、同じ保育園で出会ってから、オナ小、オナ中…と一緒だったの。この人たちにはとっても仲良くしてもらって、お世話にもなって、私たち大人になったら、家族ぐるみで付きん合っていこう…って約束していたんだ。」

佐々木「そうか!」

平井私は、オナ高、オナ大とご一緒させてもらいました。」

美紀「部活も一緒だった、自動車学校も一緒に行った、少しの間つくばのおばあちゃんちで一緒に下宿した。浜スタで一緒にバイトもした。楽しかったね。

平井「そうねなんだか懐かしい気がする。楽しかったなぁ。あの頃。。」

佐々木「あぁ、春さんだ。キミコと長い付き合いだったんだね。仲の良い女子の関わり方なんてよく知らないんだけれど、いつも春さんが家に来てくれる予定がある日は、、きキミコが朝からウキウキしながら、料理やスイーツの準備をしているし。帰った後も普段より一段と優しくしてくれる。ひょっとしたらこの2人って前世で親子か双子の姉妹だったのかなあなんて思ってるんだ。お互い良い刺激を受け合っているんだろうなぁって考えてた。」

平井「えーー。いつもすみません。」

佐々木「また来てくださいよ。」

平井「いつも家族総出で笑わせてくれるから、気持ち良くて。ついつい居心地が良くて。認められる感じが嬉しいそんなこと言われるとなんだか照れちゃいますよ。」

美紀は料理が得意だし、私は食べるのが好きだし、

佐々木「佐々木家は、お母さんのひらめきとキミコのガハハ笑いで持ってるからね。3、4回来てもらえば小ネタが拾えて笑いの方針が立つみたいよ。」

永田「なんだかこの場の雰囲気急に変わったことない?何この勤務後の安心感みたいな気持ち?」

平井「かーくん敏感!」

萩尾「旦那さんいつもこうなのか?」

美紀「あ…だめ。」

語り 美紀の腰のあたりでつないでいた手を離そうとする要。そうはさせまいと、要の手を探る美紀。わかったとばかりに美紀の肩の髪の毛を払う要。

萩尾ミイの家は、いつもそうなのか?」

美紀「そうね大体ね。」

萩尾「旦那さんは、乗っけるのが上手な人?」

美紀「そうねぇ…なんて言うのかなあ…私にとっては魔法のランプに戻らなくても、よくなった魔人のジニーよ。」

佐々木「(ルパンのものまねで)魔法のランプだってー?あれはよぉー、戻るランプがあるから、信用されるんじゃないのかい…?なかったら、都合よく使われるだけだぜ。」

美紀「あはははは…あらら…ルパンカー!今日は阿部ちゃん1番じゃないの?それなら…検診、上杉謙信ならどうよ?」

佐々木「(鈴木亮平のものまね)阿部さん、今週はお休み。俺ならさぁ、同じ場所で4回以上戦わない。3回戦っても決着がつかないなら場所を変えるか何か考える。4回戦ってドローなら和木して同盟を結ぶ。」

永田「!そっくりさん!」

平井「始まった始まった!この掛け合い面白いんだよ。」

萩尾「似てるわー。そっくり!ひょっとして芸人さん?」

佐々木「いいえ、ただのサラリーマンでーす。」

美紀「あはははは…あらそう!もう…上手く伝わるかなぁ?とにかく着眼点が凄い人。今日は60点かな。初対面の人が2人いるからね。それに、我が家は家族が揃うとなぜか笑いがやって来るわよ。」

永田「ハハハ!家にお笑い芸人がいるの?でも、言ってることの筋は通ってる。そうきたかって感じがする。」

萩尾「気づきが深くて広い人ってこと?」

美紀「うん、そうね。確認するって事はあっても、疑うって事はないわね。あまり言うとね…良くないんだ。鎌倉一の照れ屋さんだから、逃げ出しちゃう。なかなか治らなくてね。「」

萩尾「ミイがポンポン冗談言うのか!」

平井「ほんとね。」

あはははは…」

佐々木「んー。この場の雰囲気って、なかなか良いもんだね。バッハ君…初対面で勝手に呼ばさせてもらうんだけれど。」

萩尾「はい。いっすよ。」

佐々木「今日のイベントに合わせて2軒目のオープンをセットしたわけでもないんだろうけれど、安心してもらいたい人がいたのかな?この3人の女子の目線見てるとそう思っちゃうよ。“こいつ信用出来る…”の前に“やっぱり…”!て言う形容詞がつくんだろうなぁ。誰かが嬉しそうま顔をしてるの見ると、なんだか自分も嬉しくなっちゃうよ。おめでとうございます。きっとクッキングスクールもきっと上手くいくよ。」

萩尾「そうですか?」

佐々木「うん。自分自身におごってない顔つきしてる。自慢も圧力も感じないね。こんな言い方して悪いんだけれど、今まで通り真面目にやって行けば必ず上手くいくから。」

萩尾「はい。…ありがとうございます。」

美紀「私の旦那さんね、占い師じゃないけど読みを外した事は滅多に無いのが私の自慢ね。」

永田「私の言いたいこと全部言ってくれた。初対面なのにどうしてわかるの?」

平井「そうだね」

美紀「バッハ…あなたが大切にしたいのは家族の仲ね。辛いこと、悔しいこと、悲しいことがいろいろあったみたいね。「

萩尾「え!」

佐々木「よくわかんないけれどさ、4人を結びつける何かがあるんだろうね。ずいぶん良い思い出なんだろうな。オナ…何だっけ?オナ…。」

美紀「こらこら!とくさんそっち行っちゃだめよ。いらんこと言わんでよろしい。もう…ちょっと油断するとすぐそっち行っちゃうんだから。」

佐々木「また怒られちゃった。」

音☆ 一同の笑い声。

永田「ミーコたちっで.いつもこんな感じなの?」

美紀「え!やだ…いつもエロいわけじゃないからね。最初はよくわかんなかったんだけどね、今はもう気を使うって事は無いわね。私のことをよく見ていてくれるし、すごく助けてもくれる。けれども、さっきみたいにいたずら好きで、私がいないと自分を喜ばせることもできない人なのよ。笑えちゃういたずらするから、放置したら社会の迷惑かな。」

佐々木「そうだろうね。そんな気がする。」

平井「いつも美紀大笑いしてるから、仲良いんだろうなぁ…って思える。」

永田「(小声で)めったに読みを外さないとか、そうきたかって感じの目の付け所…、人を惹きつけるようなお笑い話…筋の通った意見…アドリブの速さ…

萩尾「(小声で)波動か!久しぶりに聞く言葉だよ。いろんな人が大勢集まってくるんだろうなぁ。」

これなら周りも落ち着くか。これが波動を持ってる人か?あの人の言った通りになってる…。」

永田「わー!こんな感じなんだ!すごい安心感。」

萩尾「いつもこうなのか?」

美紀「まぁね随分沢山の言葉を知っている人だからね。」

平井「ミーコの旦那さんみたいな人が大勢いてくれたらなぁ。どこかの学校にいてくれたらよかったなぁ。」

萩尾「俺、ミイの旦那さんと話が合うかも。」

美紀「ん?何だっけ…?ごめん、寝てたかも…」

平井「この子いつも夜は早く寝る子だからね…。しっかりしなさい。」

佐々木「そうしなさい。」


美希「勝手に連れて行くのはやめてよ。私困っちゃうから。」

平井「ちゃんと聞いてたみたいね。ミーコの旦那さんってあの人みたいね。ほら…伊藤先生よ。」

佐々木「たった今、私の人生の1番良い瞬間が通り過ぎていきました。皆さんお疲れ様です。」

音☆ の笑い声。

永田「そうだ!そうそう!」

美紀「でしょ!あの人をメンズにしたような感じなのよね。」

萩尾「やっぱりあれか…目を見れば何を言いたいのかわかるの?」

美希「それはちょっと無理かも。心理学勉強しないとね。私最近ちょっと意味がわかってきた気がする。正直な人ほどわかりやすいかも。」

萩尾「俺なんかやばいんじゃん。素直で正直者だしな…。それでか…。」ォ

音☆ 一同の笑い声。

永田「そういう人か。」

萩尾「ミイ…たしかスクカンの仕事だったよな?一緒に働いているのか?」

美紀「うん。イエスにてノー。伊藤先生は、今や鎌倉市の教育会のトップよ。

森下由紀(涙声で)「美紀…美紀ちゃん。」

美紀「ん? なに、とくさん…?どうかした?」

佐々木「え?俺じゃない、右斜め前にいる人。」

森下(涙声で)「美紀ちゃん、私のことわかる?覚えてる?森下由紀。」

美紀「え!びくったー…。由紀ちゃんだよね。」

森下「うん。」

美紀「覚えてるわよ。久しぶりね。」

森下「私…一言お詫びしたくて…中学の頃ひどいこと言ってごめんなさい。」

語り 森下の目を正面から捉えその動きを観察する美紀。

萩尾「おい!涙で人を騙しに来たのが?嘘は通用しないぞ。俺たちは、今頑張って生きてる友達が辛かった頃を思い出してまた苦しむ顔を見たくない。」

美紀「バッハ、ありがとう。大丈夫だから。」

森下「本当にごめんなさい。」

語り 人目を気にせず深々と頭を下げる森下。

美紀「由紀ちゃんそれやめて。頭を上げて。あの時は私も嫌だったよ、でも…私…ちゃんと自分に向き合えるようになれたよ。ついこの前までしくしく泣いてたけど、大勢の素敵な人に恵まれて暮らしてる。私は私で頑張っていくから、由紀ちゃんもいろいろあるんだろうけど頑張って。私とのことなんか忘れて.自分と向き合って正直に生きていってよ。お願いね。」

森下「やっぱり…やっぱり勝てないよ私。こんなにキラキラしてたら追いつくことだってできない。」

永田「一言だけ言わせてもらっていいかな?勝ち負けを思いながら生きるのは大変よ。誰かが助けてくれると思って行くようになりなさいよ。」

森下「みんな幸せなのに…私だけ取り残されるのが怖かった。」

美紀「やっと本音が言えたみたいね。」

平井「どうして涙を流しているの?ここに来れば遭遇することも想定していたでしょ?覚悟して来んじゃないの?、何か隠したいようなプライドがあるの?言い訳を聞いてもらえそうもなさいからなの?ひどい言い方してごめん。何なのその涙は?」

森下「わからない。」

平井「準備不足なの?」

萩尾「俺は、自分の価値観を都合よく押し付けて来る奴は信用しない。」

平井「私たちね、たった一度のエラーであなたを見捨てようとは思わない。でも、そんな涙されても困る。何を信じたら良いのかわかんない。」 

佐々木(小声で)「美紀ちゃんもう…」

美紀「もうそのくらいにしてあげて!」


美紀「じゃぁ由紀ちゃん、またね。」

語り 森下に背を向けて玄関方面なんか進む5人。森下は、その集団を見つめる。

佐々木「バッハ君、キミコを守ってくれてありがとう2人のお姉さんも助けてくれてありがとう。。でも、俺なんか大した人間じゃないから…誇大広告には気をつけよう。挑発と誘惑が山盛り。半値、八掛け、5割引…これで行こう。」

音☆ 全員の笑い声。

萩尾「俺、ミイの旦那さんの真似してみた。わかった?」

美紀「あら!そうなの?全然わかんなかったよ。コースを狙って置きに行ったでしょ?」

萩尾「~残念!俺も今度ミイの家に行ってもいいかな?」

美紀「んーせっかくだけど、とく…..私の旦那さん明日から海外転勤だから…また今度ね。」

萩尾「なにそれ!まじかよ!残念だなぁ!」

美紀「ぼちぼち行くね。」

平井「うん、そうしよう!」

永田「じゃあまたね。」

萩尾「うん、🙂‍↕️はひははまやはにまなはまみんなまたな。」

語り その場に残る森下。

美紀「ミーコさんがコンビニアイスおごってあげるね。」

佐々木「うん。ありがとう。でもなぁ…。」

美紀「でも何よ?」

佐々木「シートに座ればぐーすかぴーじゃないのぉ?」わ

美紀「やっぱり?ガハハハ…。」

語り 車にたどり着くまでの間2人のたわいもない会話が続くき、美紀の笑い声が印象深く続く。

音☆ 「び」と言うドアの解除音。「ボンボン」とドアを閉める

「パワーオン」みダッシュボードからのアナウンス。

「ブロロロローン」とシーケンシャルエンジン始動音。ろよ

「ピピピ」右前方に人がいることを知らせるライダーセンサーのアラート音。

語り 右隣の車の前に立つ人影を見つけた要。

佐々木「あれ?美紀ちゃんあの人…。」

語り 今さっきまでゲラゲラ笑っていたが、腰掛けた途端に眠り込んだ美紀。

佐々木「美紀ちゃん…?えー?もう眠ったの?ハヤッ!」

音☆ ドアの開閉音。

佐々木「あ!あなたさっきの…。」

森下「後追いしてごめんなさい。森下由紀です。」

佐々木「はい…どうも。ちゃんと覚えてますよ。どうかされましたか?」

森下「すいません。美紀から私のこと聞かれましたか?」

佐々木「いえ…。さっきのロビーの雰囲気から推察出来ます。」

森下「精神的におかしい…と思われるかもわからないのですが、中二の時には勝手にいじめておきながら、今度は久しぶりに姿を見て、うらやましく思えてしまいました。どうしたら彼女に近づけるのか…できればヒントをもらいたくて。図々しいですよね。恥知らずですよね。でも、これでも…私必死なんです。」

佐々木「都合良過ぎませんか?まともな返事がもらえるなんて考えているのですか?必死と言えば協力してくれる人を獲得できると思いますか?コピーしたところであなたの暮らしがどう変わる」

森下「ひとつひとつに言い訳めいた言葉しか思いつきません。」

佐々木「あいにく、シートに腰をかけたらすぐに寝ちゃいました。いつも夜は早くて、9時半頃には休みます。今の彼女にあなたと同じ目線に立つのは難しいです。でも、先程の4人の会話、どのあたりから聞いておられたのかわかりませんけどね。女子は濡れたがるし、男子はへそ曲がり。女子は幸せ自慢で、男子は不幸自慢。気持ちなんて厄介だね。でもさっき感動したなぁ…1度のエラーであなたを見捨てるつもりはないか…。」

森下「はい。なんだか少し楽になりました。」

佐々木「中学2年の時あなたが本当に伝えたかったのは、私たちこのままだと誰からも相手にされないほど暗い性格なんだけれど、どうしたらいいと思う…て言う話じゃなかったのかな?」

森下「え?どうしてそれを?私って判りやすいんだ!」

佐々木「簡単なことを難しく考えていませんか?真似をしたところで幸せにはなれませんよ。」

森下「はい。それは分かります。」

佐々木「そしたら…。彼女が普段から意識を持っているのは、責任を持って向き合い一緒にときめくところだと思うんです。抱えた課題を認められるのか?その課題と同じ位のサイズの将来を持てるのか?課題の解決に自分の都合を優先させばしないか…何度もん、何度も繰り返して考えたみたい胸よ。をダメージを受けてひどく落ち込んだ時に大勢の人から声をかけられてめ、人生楽しくないといけない…と思うようになったのかも。挨拶と態度と感謝とお礼で人のん値打ちが変わるって気がついたのかも。当たり前のことを馬鹿にせずちゃんとやる、どんな時も…なんてかんがえるようになったのかも。真面目にやってれば困らなくて済むって思えたのかはも。1度でも多く笑った人が勝ちなんだ…と考えるようになったのかも。だから、あんなに遠慮なく大笑いできるのかも。」

森下「少し分かってきました。私頭悪いから、メモとればよかったです。」

佐々木「ハハハ…そんなに重要なこと言ってない。あなたが知りたいのは、もっと別のことじゃないかな?」

森下「え!」

佐々木「結構前からロビーに降りてきていましたよね?」

森下「見られてたんだ…。」

佐々木「ご自分にしっかり向き合えば良い友達できますよ。それじゃあ失礼します。」

森下「失礼します。」

音☆ ドアの開閉音。静かに発信していく車の音。

佐々木「この子たちにとって、必死っていう言葉は何かのパスワードか?順番に使って…どこに向かうためのファスナー合流なんだ?次に出てきそうな言葉を想像したら、心理は想定できるのにな。あの人…自分の現状を認めたくなってきたんだろうな。捨ててしまえばこんなに可愛いのになぁ… ねえ、美紀ちゃん。」

語り ほをつつこうと手を伸ばす要。

美紀「がブー!!食べちゃうぞぉ〜。」

佐々木「まぁかわいい。お姉さん起きてるの?寝てるのか…。忍法使いよったな。ーー」

音☆ 「ピー」と、運転視線を注意するアラート。

佐々木「私の寿命を10年差し上げますから、美紀の子宮頸がんを治してください。完治寛解をお運びください。どうか助けてください。この子を病気や怪我、災い、事故、災難からお守りください。よろしくお願いします。」



語り 9ヶ月後 2月のデトロイトに向かう機内。 

音☆ 機内の様子。

美紀「とくさん、とくさん…こちらミーコ。もうすぐ着くからね。ねぇとくさん。私と結婚して楽しい?私は楽しいよ。私ね、口に出せないことがある。あなた…結婚詐欺だって思わせないようにしないと…なんて考えているでしょ?全然そんなことないからね。私の方こそ…だから口に出せないよ。私からしたらあなたの想定力と褒める力はリスペクトポイントよ。凄い人の周りには凄い人が大勢集まるんだなってわかってきた。一人の人の命はその人だけのものではない…とか、のか、信じたら疑わないなんて…言われれば、ラブソングな生活しているのと一緒よ。私ね、こんなに早くがんが治るとは思わなかった。病気でも性格でも治しちゃえば無敵だね。ドクターも驚いてたよ。あなたのおかげに間違いない。これで3度目ね私の命を救ってくれたの。返したいものがあるからしっかりあなたと向き合いたい。少しは減衰しちゃってもいいからね。構わないよ楽に暮らそうね。おかしいなぁ前と気分が違う。」


音☆ 空港の賑わい、アナウンス。

語り デトロイト国際空港送迎ロビー

佐々木「美紀ちゃん!こっちこっち!は

美紀「あ!とくさん!」

音☆ 走りよる2人の足音。

佐々木「大丈夫?」

美希「そうね!大体ね!淋しかったよー!」

語り ハグする2人。

佐々木「俺も寂しかったよ。あれ?ママは?」

美紀「そのうち現れるんじゃないかな。」

佐々木「キミコ…おむね…小さくなってない?」

美紀「早速来たわね。山田から置いてきたの。」

佐々木「大分、かなり痩せちゃったんだ。治療がんばったね。」

美紀「うん。もう心配ないから。元気だからね。」

語り ハグしたまま深呼吸を繰り返す要。

裕子「要クンにスキあり!私ならここだよ!」。

佐々木「ワッっ!びくった。」

語り ハグしたまま深呼吸を繰り返す要。

美紀「行くぜよ!セイ!よいしょっと!スープレックス!」

佐々木「うわぁー!おい!やめてくれよー!」

語り 美紀に遊ばれる要の背後から近寄り、バックハグをかける裕子。

裕子「要クンにすきあり!」

佐々木「うわー!こっちからも来た!」

語り へなへなと床にしゃがみ込む要。

裕子「ちょっと聞いてくれよ…美紀「ったら飛行機の中でも迷子になるんだよ。もう!あいつの阿呆さ加減にもうんざりよ。。私が一緒でなかったら、今頃テロでも起こしてたわよ。」

美紀&佐々木「どうもすいませーん。」

美紀「良いのよ途中で降りろなんて言われなかったし人畜無害、着陸成功したさぁ。なんくるないさ。ほら…とくさん.これねお土産ね。クマちゃん…久しぶりに買っちゃった。この子激安だったんだよ。」

佐々木「あーやあさーさーカラオケ行こうか!」

裕子「うん良いよ。いつにする?」

美希「おのおの方、トランキーロ!あせんなよー!まず飯食って寝よう!」

音☆ 3人の笑い声。

音楽 宇多田ヒカル 『真夏の通り雨』

語り 美紀と要、2人の回想。

.展示車に乗り込む美紀。青白く血色の悪い、顔色、濁った虚ろな目。その周りにはうっすらクマも見られる。能面のように無表情。活気もない。展示車の向かいのベンチに座り.心配そうな顔をす要。近くの壁にかけてある時計が午前11時を指している。

.展示車の周りにバリケードを用意するが話しかけることもなくただ見守りを続ける要。その後何人もの社員が、訪ねてきても両手でブロックのポーズを取る。

.


美紀「バン!バーン!バキューン!」手でピストルの形を作り、向かいに立つ要を撃つ。

美紀「はっきり言います…」

美紀「仕事上ならきちんと判断できるのに、もっとちゃんと自分と向き合ってください。」


美紀「セイ!よいし!」


美紀「生きていても仕方ない…」


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フファスナー合流(後編)ァスナー合流(後編) 星野玄明 @sotobori

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