011 うちの期待の新人・星くんは……

現場でPM支援をしつつも、自分のチームの承認作業があるので、週一で帰社しないといけない。

(昔は現場で全部できたのに……今は情報持ち出し厳しすぎ。ほんと窮屈な時代だわ)



そんな帰社日。

うちの課には、今年4月入社の新人――期待の星くんがいる。

研修を終え、7月から小さなプロジェクトへ配属中。


承認が終わりかけた時、

ちょうど帰社して来たのは、彼の教育担当のリーダー女子。

目が合った瞬間――


……あ、やばい。怖い目してる。


こっち来た。

隣に座った。

空気が重い。


「相談があるんですけど、少し時間いいですか」


――いやいや、まずは**“おつかれさまです”**じゃない?

(その、他人行儀な、私もあなたの部下ですけどオーラはなに?)


「今年入った新人のことなんですけど」


――え、まだ相談OKしてないんだけど(汗)


「ああ、期待の星くんな」


「そう、その“期待の星くん”なんですけど」



そして衝撃のひとこと。


「口癖が、『でも』『だって』『どうせ』で」


「それ、……黄金の三種の神器だなw」


「笑い事じゃないんです!!」


――はい、叱られました。

俺のほうが涙目になりそう。



さらに教育担当のリーダーによる面談での感想は――


・面倒くさいことに巻き込まないでほしい

・自分に、判断や回答を求めないでほしい

・そして、とにかく楽をしたがる


……って、なにその守りたいこの無気力感。


そして極めつけ。


星くんの新しい口癖。


「なんか、いつも、やらされ感いっぱいっす」


――俺、滝汗。

「やらされ感」って新人の段階で解禁ワードなの?


彼女が注意したら、すぐ涙目になって黙っちゃったらしい。

……マジか。



メールチェックや承認処理を終えて、ノートPCを閉じながら、俺は言った。


「……でも筆記はすごくよかったらしいぞ」


リーダー女子「……」


――はい、完全に逆効果。慰めゼロ。

むしろ火に油。怖い顔がさらに怖い顔に。


慌てて必殺のPM逃げ台詞。


「君の教え方は素晴らしい。君ならできるよ。

長い目で見ていこう。……あ、ごめん、現場戻る時間だわ」


――やばい、しばらく社内には戻らんとこ。(汗)



現場へ戻る電車の中で思った。


……最近の新人は、なんとも頼もしい。


でもこれだけは断言できる。


このエッセイを読んでる全国の新入社員のみなさんに――

君は絶対、勇気を与えている!


そして星くん。


君はすでに、先輩女子を泣かせている。

――いや、俺も泣かされそうだが。


【了】

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